翻刻
胃中へ納(おさま)る食物の品(しな)によりて其納る処の異(ことな)る哉(や)
いかなる物を食するとも胃中より外(ほか)納る処なし
されば病の根元(こんげん)也其根元より諸方(しよほう)へ発(はつ)し病名を求(もと)
む是万病一毒の験(しるし)胃中の毒をさる時は万病治す
といふは此理(このり)也 然(しか)れば一病を治して余(よ)の病は後(のち)に愈(なほ)
すなどゝいふは是療治の治定(ちぢやう)なき証拠(しようこ)也唯其 悩(なや)む
所を押付置(おしつけおく)而已(のみ)にして治すといふにてなし今病の
名(な)数多(あまた)にして一々 説(とく)に遑(いとま)あらず両 三種(さんしゆ)爰(こゝ)に説(と)く
◯脹満(ちやうまん)此病は胃中の毒 充満(じうまん)して皮表(ひひやう)をとぢ
腹満(ふくまん)す然(しか)るを腹中より水をとるの療治あり一旦(いつたん)効(かう)
を得(う)るといへども日を経(へ)て又 元(もと)の如(ごと)く腹満すれば必
死す人無病なれば惣身(そうしん)より気発するものなれば此
病はまづ皮表(ひひやう)の毒を攻(せめ)気発(きはつ)をたて後(のち)下剤をもて
毒を下す元(もと)自然(しぜん)に水気(すいき)溜(たま)りたるやまひなれば自
然をもて其水気を下(くだ)すときは必治す◯痢病(りびやう)此病
は毒のため腹中 冷(ひへ)て雫(しづく)の如(ごと)く数度(すど)下(くだ)るの症然る
を留(とめ)んと療する故(ゆへ)に腹中に毒 充満(じうまん)しあるひは肉(にく)
下ると思ふが故に治するの道(みち)を失(うしな)ふ温(あたゝ)めて其毒を