翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

精養 - 翻刻

精養 - ページ 20

ページ: 20

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抔(など)と云ものあれども天の理に逆(さか)ふ也 鳥(とり)獣(けだもの)虫(むし)に至(いた)る迠(まで) 死を恐(おそ)れざるなし況(いわん)や人においてをや人 上発(じやうはつ)気発(きはつ)せ ずんば病に負(まけ)るなり既(すで)に哀(あはれ)の物語(ものがたり)を《振り仮名:聞■|きくとき》#1は心(こゝろ)沈(しづ)み 勇(いさ)ましき物語を聞■は心 発(はつ)す然(しか)るを病人いまだ死 せざる前(まへ)より仏像(ぶつざう)を掛(かけ)念仏 三昧(さんまい)しかのみならず薬 を止(やめ)させ読経(どくきやう)し病 平愈(へいゆ)を祈(いの)るか無念往生(むねんわうじやう)を進(すゝむ) るにかあるなれとも病を去(さる)べき術(しゆつ)有(あつ)て死を急(いそ)ぐとは 苦痛(くつう)を遁(のがれ)んとあるべけれど其苦痛も薬(くすり)のあたらざる 故也一日半日たりとも生延(いきのび)るこそ天地への勤(つとめ)也 一度(いちど) は死するものなれば決定(けつぢやう)の覚悟(かくご)を極意(ごくゐ)とし今 死(し)ぬ 迠も死ぬまじと思(おも)ふ時は病に勝(かつ)也とかく病にまける 故に体(たい)をつからす既(すで)に愛欲(あいよく)の念慮(ねんりよ)有(ある)人 精(せい)を失(うしな) て死せざるあり恥(はづ)べき事(こと)なり必竟(ひつきやう)余念(よねん)を生ずる故 死をとげがたし試(ため)し見るに金銀(きん〴〵)のために死を惜(おし) む輩(ともがら)あり生(うま)るゝ時 持来(もちきた)る哉(や)天下の宝(たから)を預(あづか)り居(いる) といふ事を知らぬ愚(ぐ)の甚(はなはだ)しき也死する時こそ無(む) 念(ねん)無想(むさう)にして仏果(ぶつくわ)の生離(せうり)こそありたけれ命数(めいすう) 尽(つき)ざる命病のため失ふは天の性(せい)を知らぬなり父