翻刻
【右丁】
《割書:を按するに八月廿六日牧野佐渡守に寄騎五十人同心百人を預らる十月|十二日御いとまをたまひ十一月十六日板倉周防守か家にうつると云々しかれは》
《割書:板倉牧野か交替は明暦|元年の冬と見へし也》同き十二月朔日七十一歳にて関宿の城に卒《割書:ス》
《割書:此人の職に在し由の名誉天下の称する所又あけてかそふへからすその要を取て|一条をこゝに注す重宗職に任してのち毎日に決断所に 居所西面の》
《割書:廊下にしてはるかに拝する事ありて決断所にいたる此所は茶磨|一ツをすへ置 明り障子を引たてゝそのうちに座し手つから茶ひき》
《割書:なからうつたへをきゝわかつ人みな此事ともを不審しあへりされとも|いふ事もえなからす はるか年へてのちとふ人のありしにこたへていはく》
《割書:まつ決断所より 出るときに 西面の廊下にてはるかに拝する事は|愛宕の神を 拝する也おほくの神の中にことに愛宕は霊験あらた》
《割書:なるときゝし程に所願ありてかくは拝しぬその所願といふは今日重宗か|うつたへをことわらんに心におよはんほとは私の事ありしもしあやまつて》
《割書:わたくしの事あらんにはたちところに命をめされ候へとしころふかく頼まいら|するうへはすこしも私心あらんには世になからへさせ給ふなと日毎祈誓》
《割書:するにて候又うつたへをわかつ事はあきらかならぬは我心の事にふれて|うこくかゆへなりとおもひならぬよき人はみつからうこかさらんやうこそ》
《割書:あらめと重宗それまての事はかりかたくたゝわか心のうこくと|しつかなるをこゝろむるには茶をひきてしるまたさたまりてしづか》
【左丁】
《割書:なる時は手もそれに応して磨のめくる事平にしてきえられて おつる|ところの茶いかにもこまか也 茶のこまかにおつる時にいたりて我心も》
《割書:うこかぬとしりそのゝち やうやくにうつたへをわかつまた明り障子を|へたてゝうつたへをきく事は およそ 人の顔互にうち見るより憎さけ》
《割書:成とあはれましきとあり まことしきありかたましきあり其品多く|していくらといふ数を しらす 見るところのまことしきと思ふ人の》
《割書:いふ事はまことゝきかれかたましきこそ見る人のなす事はなにことも|皆いつわりと見ゆあはれましき人のうつたへはまげられたる所有よ》
《割書:とおもはれにくさけなる人のあらそふはひか事ならんと覚ゆこれらの|たくひは我目に見る所に心のうつされてかれとことはをいたさぬ内にはや》
《割書:我心のうちによこしまならんたゝしからんよからんすくならんとおもひ|さたむるほとにうつたへの事をきくに至りてはわかおもふかたにのみ聞なす》
《割書:事多しうつたへの中におよひてはあはれましきににくむへきあり|にくさけなるにあはれなるありまことしきにいつわりかたましきか》
《割書:なをき此たくひことにおゝし人のこゝろのしりかたきかたちをもつて|さためん事かなふへからすいにしへのうつたへをきくには色をもつてきく》
《割書:事ありそれはおほはるゝ事なき人の事なるへし重宗かこときは見る|所につきて心おほはるゝ事多し又さなきたにうつたへの庭に出んは》
《割書:おそろしかるへきにまして生殺をつかさとる人を見てははやくいふせく|おのつからいふへき事をもいはて罪にも科にもあふ人あらんとおもふ》