翻刻
【右丁】
【枠外】 八ッ目
【上段】
あく五郎はおとしあなのはかりことにて
てもなく仁内兵作をりへ小いそ四人の
ものをうちとりてしがいはそのまゝ
かたへなるせき川へざんぶりいはせ
此うへは仁内がいへに立かへり
かの二百両をやさがしなし
わいらにもわけくち
やると身づくろひする
をりしもあれ
あたりのじゆもく
めいどうし
なまくさきかぜ
ふききたりせき川へ
うち入し四人がしがい
うらみのこんばくとしふるうなぎに
のりうつりわきばらにつらなりし八ッか
まなこを見ひらきてうづまくなみより
うかみいであく五郎をはつたとにらみし
そのありさまたとへていはんものもなし
あく五郎がいちみのものどもこれを見て
おそれおのゝきあとをも見ずして
にげさりけりあく五郎せゝらわらひ
ちどり丸にてきりはらへば刀の
いとくにおそれてや八ッめのうなぎは
もとのなみへぞかくれけるあく五郎ひとりごと
今のおばけで手したのやつらにげゆきしは
もつけのさいはひこれよりすぐさま
仁内がやさがしして二百両はおれひとり
うまい〳〵とはせいだし仁内がいへに
かけいりこゝやかしこをさがせども▲
【中段右】
〽したくは
よし
〳〵
【中段中】
〽わすれた
ものは
こざんせぬ
かへ
【下段】
▲かの二百両は正作がてに
もどりしゆへやさがししても
あらばこそたくはへおきし
わづかのかねひろひ
あつめて
くわいちうなし
ゆくへもしれす
おちうせけり
かくとはしらず
孝太郎
みさほらは
むらおさの
日まちの
ふるまひ
ことをはりて
やどへかへり
やうすをみれば
ぬす人の
入してい
仁内はじめ
四人とも
をらざれば
こはそもいかにと
おどろきけり
「作者曰」【矩形で囲む】これより
次の日四人のしがい
せき川よりあがり
孝太郎みさほが
なげきのべに
おくりてついふくを
いとなみかたき打に
いづる事いつもかはらず
お子さまたごぞんじゆへ
こゝにりやくす
【男】孝
【女】み
【左丁】
【右本文】
正じき正作が家の所蔵のたから命のいちゞく
【軸内一段目】
覚
一金二百両也
但文字小判
右は此度貴殿を
相頼み娘両人
寺どまりのくるわへ
あそびに売申候
身のしろ金慥に
請取申候所実正也
長禄二年 又太夫
八月三日
正作殿
【軸内二段目】
一ふで申あけまいらせ候
さては御もとさま昨日
道中とゝこをりなく
■
と
かく
ゆ
め
の
世
の
中
あきらめまいらせ候
むすめお杉おたま
事も親のため
とてはる〳〵
【軸内三段目】
三国のはてへ身を
うりうきつとめ
いたし事
よく〳〵の
すくせあしき
ものと不便に存
まいらせ候
あのかたあるしも
心たてよろ
しき
人のよし
御申こし
【軸内四段目】
すこしは
うきを
わすれまいらせ候
二百両の
うけとり
夫かた
より
さし
あけ
まいらせ候
くは
しくは
御めも
し
にて
御
礼
申上へく候
めてたく
かしく
【掛け軸本紙】
【刻印】 巳仲秋十一日
《題:命の親》
剛斉官大臣書【刻印】
【左本文】
丈ヶ三尺六寸よこはゞ二尺二寸ふうたい十もんじたからづくしの小きんらんそうげばちぢく
てんちは手紙のほぐにてひやうぐしたるなり○此かけものゝわけ次にくはしくしるせり
【枠外】
八ッ目