翻刻
右丁
欄外
なんてもめづらしいことだ十六になる娘と七十になるぢいさまとはたし合だとさ
上枠内
「いそげいそげ 「はしれはしれ 「かけろかけろ
[つづき」
たれをたのみて娘があんどをはからんとしばらくしあんする所にさいはひなるかな此ほどむかひなる湯宿にはうづら権兵へ入湯してとうりうするよし此人はかまくらになたかき男だてにてよわきをすくふときくからに権兵へにたのみ入らば娘が身のうへあんどなりとまづ湯宿におゆきをあづけおき権兵へがりよしゆくへ出ゆきけり湯宿にてもおゆきがなげきをおしはかりさまさまとかいほうしてともになみだのそでをしぼりぬさて八郎は権兵へにたいめんしてしまつをくはしくものがたりしうへおゆきがことをたのみければ権兵へさつそくとくしんし何か扨おれきれきの御たのみ町人の権兵へめうがにかなひしことなればいとやすき御事也少しも御気づかひし給ふなしかし御おぼえありとは申ながらあひてはくつきやうのわかもの六人此方は御ろうたいの御一人まづはあやふし又はたしあひには助太刀かなはずたとひかなふとも助太刀を御たのみともぞんぜねは身ふせうながらうづら権兵衛ごづめして御あとをまもるべしいさぎよく御はたらきあそばされよとありければ八郎なみだをながしてよろこびいかにもおぼしめしかたじけなしここに今一ッの御たのみありそれがしじやくねんよりいつしん流
のたうじゆつをたんれんしたればたとへむかふものがうてきなりともやりをとつて立合ふときは十人までは心におぼえありされどもしのびのたびなればもちやりもなくなんぎいたせりたちうちにてはろうたいのはなはだ心ぼそければおんみ何とぞこよひの内にやり一トすぢ御さいかく下さるべしこれ第二の御たのみなりとあるにぞ権兵へこころえ候ごこく御りよしゆくまでじさん仕るべしと心よくうけあひければ八郎が心中ぜんごにとうわくせしところたちまちくもはれて月のあらはれしごとくかたじけなみだをうち
「権兵衛こづめいたすうへはなほせいしんをはげまされものの見ごとにうちひしいでつかはされませ
人物名 権
左丁
欄外
「せいのたかさ一丈六尺の大男だといふことた
上部枠内
「さてもさても 「あれあれあれ 「おやおやおやあれあれあれめつさうだめつさうだ 「サアサアはたしあひがはじまつたはじまつた
本文
はらひりよしゆくにかへりまづおゆきをまねきさて権兵へがをとこぎありてしかじかのしんせつをかたりければおゆきはなほさらよろこびてぢごくにほとけをえたるごとくこころのうちすこしはあんどのおもひをなせり
かかるところへやりひとすぢをとつてうづら権兵衛入り来たり
おゆきにもたいめんしたがひに一れいをはりてのちすこしもゆだんなく御したくあるべしとて権兵衛もよういととのひ六人のかたへもあんないして夜のあけるをぞまちにける