翻刻
【右丁】
【枠内】
《振り仮名:横嶋悪五郎が傳|よこしまあく でん》
【右上 本文】
それはさておきこゝに又よこしま悪五郎ときこへしは氏井仁内と
おなじくばんしう月のわゆりの助どのにつかへしものなりしが
こゝろざしあくまできやうあくにしていんしゆにふけり
さとがよひのかねにつまり月のわどのゝ軍用金をひそかにかすめとりさとの
あそびにまきちらし軍用金 紛失(ふんじつ)とのとりさたも
よそふく風(かぜ)としらぬふりひと月あまりも
すごせしがてんとういかにゆるすべき
悪五郎にうたがひかゝりすでに
とらへらるべきをいちみのものゝ
しらせければどくくはゞ
さらまでととのゝひそう
せさせ給ふちどり丸といふ
つるぎを
うばひ▲
【中央】
〽かう
ゑすがたで
さがされては
たかぶけりを
せにやあならねへ
はへ
【下】
▲やかたを
たちのき
こゝ
ろしこ
に
身を
かくし
けるが
月のわどの
より六はらへ
うつたへ
中ごく
すじへ
悪五郎が
ゑすがたを
たてゝせんぎ
きびしければ
いづくのうらにも
すまかひ
ならず
ゑちごのくにゝは
悪五郎がおぢ
大八といふもの
あればこれを
たよりてかのちへ
さしてにげ
のびけり
【左丁】
【上部絵中】
〽どつ
こい
な
あく五郎
千百拾■【箱に】
正さく
〽そふは
ゆか
ぬは
【下 本文】
さてもよこしまあく五郎は中国のか
すまひならずきそかいどうをしのび
くだりてゑちごぢへさしかゝり
のもせといふしゆくはづれの茶やに
やすみてゐたりしにふろしきづゝみを
せおひたるちゞみかいだしのあき人
正じき正作と名をとりしりちぎもの
としわかきひとり身にてたれにも
かわゆがられるあいきやう男あく五郎が
かたはらにこしをかけ〽やれ〳〵けふは
くたびれたあねさんもふなんどきで
あらうなとこしさげのきせる
だしながらたづぬれば茶屋の女
今七ッがなりましたときいては正作
そりやうか〳〵としてはゐられぬかへ
おほかみとうげの山ごし日のあるうち
せねばならぬと茶やもそこ〳〵
又 荷(に)をせおひたちいでけり悪五郎は
さいぜんより正作がていたらく
ちゞみの仲がいたしかにかねがと
心づき正作におひつきて道づれとなる
入相のころなにあふおほかみとうげに
さしかゝりぬころしもあきのなかばにて
むしのねすたく松は中あく五郎
じぶんよしとわらじのひもをなをす
ふりしてあとにのこり正作をやりすごし
ものをもいはずうしろげさあはやと
見ゆるに正作はこゝろへたりと身をひらき
せおひしつゝみをうしろへなげすて用心にさす
一こしをすらりとぬいて身をかため
〽かねてかくあらんと思ひしゆへここつちもかくご
われもむかしはぶしのはて「つぎへつゞく」【矩形で囲む】