翻刻
一二月朔日早朝見回し候処地方より二十里余も有之候津呂の御崎者下
地に見え阿波のトマリの碑者上地に見え昼五ツ時分あなし北風はけしく
吹出し真沖をさしてなかれ申候何も十方にくれ只仏神をのみ念し申候
九ツ時分に外艫打落し申候故艫に置候水はす等も流し申候八ツ時分
地山等も霞の様に相成見失ひ何方ともなく流申候
一二日あなし北風強四ツ時分こしあてより艫取かちの廻り打落候に付
捨り不申候様にくゝり付て海へ引行申候いかんとも手段無御座候に
付何髪を切海へ入立願仕候食事仕候にも水無之汐を以米をむし
夫を喰ひ汐をのみとやかく致候て流申候
一三日同しあなし北風強く船へ垢入申候故代り〳〵あかを汲出し
せいかきりの凌方致候処次第に風も和らき其日暮時分ゟ
大分/凪(ナマメク)に相成り其夜船不■児身持能く相成り申候
一四日朝凪日出る頃より東風に相成しつかなる故右海へ引居候上ハまハり
道具を巻上もとの処へ引のせくゝり付候楫も引込表の五尺板を以
楫羽板に打付諸繕方相仕舞碇を切捨て昼九ツ時分より東風
を以地方乗申候其晩方より雨降り出其夜次第に風強く相成
夜九ツ時分より北東風強く相成同八ツ時分波高きゆゑ上廻り最
初括置候分者又々打落楫廻等も又々打落込候に付又々碇を引かせ
流レ候内大雨ゆゑ天水を橋舟へ溜たこなとへも溜少々とり溜申候
一五日同北東風強昼九ツ時分ゟ雨晴西風に相成猶々波高く相成り候
故上ハ廻り道具切はなし打捨申候暮時分ゟ其夜波風あらく相
成り其夜をもかち上ハ廻切落申候并艫のとこぬきまても打落