翻刻
ぼうつ【ずカ】舟に相成申候て夜をあかし申候
一六日朝より大西風殊にとも垣廻り等者なくなり候故波打込
火床廻り数板等も地板付へ打落艫に住居なりかたく相成
候に付舟廻りへ参居申候殊に火たねも失ひ飯たく事も相
成不申昼八ツ時分にとも中戸棚のたて際より三尺はかり
打さけ垢入候に付字舳よりかつはのかすがいをぬき右戸棚いたみ
候処へ打候て垢留仕并腰あて貫口等も相傷み舟もてかたく哉と
存夫ゟ暮時分柱を切捨其夜流れ明し申候
一七日朝凪曇り只汐にまかせて流申候内暮頃より雨に相成り南
風時々吹出し次第に強大南風にて其夜もゆられ明し申候
一八日朝より大南風昼九ツ頃より空晴西風に相成り其儘流申候は
かりに御座候飯米も白米七八升も有之候得共火も無之に付時々生
米にて気の付候程少々つゝ給申候
一九日朝より北風なぎ垢水汲出し只流候はかり外に手段無之候
一十日朝より凪前日のことく流申候
一十一日凪にて朝四ツ時分に道程四五里程に嶋地を見付夫より何も少し
力つき先々神様へ何とそ彼嶋へ着船為致可被下と立願をかけ壱
同に相祈申候ろかいは無之見流申候
一十二日早朝見候処嶋地より日の下《割書:東ヲ
サス》方へ道法六七里も/あしき(本ノマヽ)見え申候
昼九ツ時分よりいなさ東風に相成り夫より猶々彼嶋へ吹付候様にと
神に祈申候帆をときわけ横帆にかけて流申候され共汐行あしく御座候
て舟埒明不申日も暮其夜もゆられ申候