翻刻
一十三日朝よりいなさ東風にて帆を竿先に持せ流候処其日暮時分に
嶋地へ道法二里はかりに近寄皆々心強く相成其夜八ツ時分嶋の前に
着致候碇を入かゝり申候扨嶋の様子を舟より見候処山へ直に波打かけ
申候様子にて上る場も無之相見得何とか詮議仕候内七ツ前ゟ風強相
成則碇網をすり切其場より壱丁はかりに西へ流何も驚橋舟をお
ろし岡へ上り可申手段仕候得共波高く候故橋舟ハ乗得かたく何角
仕候内其儘本舟岡へ打寄直ニ岡へ上り申候処無程夜明申候
一十四日朝より南風雨天に相成り四人共仏神の加護により無恙着
嶋致候義も悦合申候扨雨天にハ有之数日水なしにて渇し居候
折節に付何も天水を呑息継申候夫よりはす桶并小桶に水を取
溜申候右場処あまり荒磯にて住居仕かたくに付外に人家も有之
やと相考昼九ツ頃にも相成嶋中尋見可申心得にて上り処萱深く生茂り
道もなく中々通りかたく候故詮方なく本の磯端へ戻り候処近辺に
岩穴御座候故日暮にハ相成先ツ其処に一夜明し申候
一同十五日之朝より日和よく何も起上り候得共飯米も無之に付何共
可仕様無之四人之者面を見合扨々不及是非に次第なり処詮叶ハ
ぬまても先ツ礒貝にても取可喰それよりいつれも
貝をおこし或ハ磯菜を取其日相暮穴へ戻り申候其夜五ツ時分
に穴の口に差おき候荷なひ桶の内へ小鳥一羽飛入候様子に御座候得共
夜中にて火も無御座に付其儘打捨置申候
一同十六日朝より日和能何れも早朝より起申候処夜前荷中へ飛入し
小鳥壱羽其儘居候ゆゑ其鳥を殺し少々つゝ給候得共さして味ひも