翻刻
○饑歳(きゝんとし)は天地の変(へん)にしていつあるへき事かまへ角(かど)よりしる
べきにはあらざれども古(ふる)きふみにも六/歳(さい)に一饑(いつき)十二歳(じふにさい)に一荒(いつくわう)
などゝもありて我 日(ひ)の本(もと)のいにしへよりきゝんの事(こと)は史乗(しじやう)【左ルビ ふみ】
にものせ雑説(ざつせつ)にも見えて三四五十年の間には必ずある事の
よしいへり畢竟(ひつきやう)天地のへんは天の人をいましめたまへるにて
大平の 御代/豊年(ほうねん)打つゞき人々 御恩徳(こおんとく)のあつきにあま
へておごりにふける時は天よりきゝんを降(くだ)し人をいましめ
たまふ是天の人をあはれみ給ふにて永くめでたき
御代(みよ)のしるしをあらはし給ふなり国(くに)無道(ぶだう)にして五穀/豊稔(ほうじん)【左ルビ できる】
するは天の見すて給ふなりといへりされば人々きゝんは天の御
めぐみと心得/手当(てあて)によりわざわひをのがるべき事をしり其身
をつゝしみ御制度(ごせいど)を固(かた)く守(まも)りかゆをすゝり酒(さか)もりせずそまつ
なる衣服(いふく)を着(ちやく)し住居(ぢゆうきよ)の好(この)み事(ごと)せず人と争(あらそ)ひせず仁心(じんしん)を本(もと)とし
自分(じぶん)の力(ちから)に及(およぶ)たけは人の飢寒(きかん)をすくひ生死(しやうし)をともにする心得
第一なるべし人の死(し)ぬるをもすくはずその身(み)計(ばかり)を思(おも)ふは身
勝手(かつて)にして天の御心にたがひ神慮(しんりよ)にも背(そむ)きてまのあたり重(おも)き