翻刻
命(いのち)たすからんと思(おも)ふゆゑ不慮(ふりよ)の事をもおこすことあり是第一
につゝしむべき事なり上には父母と仰(あふ)ぎ奉(たてまつ)る 君のましませば
いかで見ごろしになしたまふべき又/国々(くに〴〵)在々(ざい〳〵)所々(しよ〳〵)僻遠(とほきはし〴〵)の地(ち)に
至(いた)るまで国主(こくしゆ)領主(りやうしゆ)ありて治(おさ)めらるれば夫々(それ〳〵)御手当(おてあて)ありて御(おん)
すくひ有事(あること)相違(さうい)なけれは人々心をおちつけ気遣(きつかひ)なき事をわき
まへうすきかゆをすゝり麦(むき)引(ひき)わり大豆(たいづ)小豆(せうづ)穀類(こくるい)かず〳〵海草(うみくさ)に
もこんぶあらめひじきなど多く其外(そのほか)うゑをしのぐもの数々(かず〳〵)
あれば力を尽(つく)しいかにもしてうゑをしのぐべしかりそめにも
人をいつはり又は争(あらそ)ひがましき心をおこすべからずわざわいは下(しも)より
おこすならひなれば此所(このところ)をよく厚(あつ)く心掛(こゝろがく)べし○其身まづし
きは骨折(ほねおり)ても不仕合(ふしあはせ)あり又は心掛あしく平生(へいぜい)おごりて衣食(いしよく)
住(ぢゆう)の為についやしきゝんになりたくはへなきは自分(じぶん)のゆだんなり
つら〳〵遠謀深慮(とくとしあんし)人の富貴(ふうき)をうらやみそねむ心あるべからず
平生(へいぜい)中(なか)あしくともめくむものあらばかたじけなくうけてその
恩(おん)を忘(わす)れず是迄(これまで)自分おこたり不始末(ふしまつ)なるを後悔(こうくわい)し志(こゝろざし)を
改(あらた)め善人(せんにん)となるべし又自分/兼(かね)ての心掛なく餓死(うゑじに)するとも