翻刻
一体の容貌アメリカ婦人とハ格別相違にて甚たいやしげなる
姿にて幽艶なるハなく不束にしてしつッこく本邦の女とハ大
違也と云アメリカ仕立の女衣服ハ筒袖にて繻伴のことく
仕立鯨の骨にて張りを入れたるとの也是を着て胸元
をコハゼにて〆合せ無辺に巾広き隔なき袴のごとき
物をはきて腹に細帯を以て堅く〆る都て体の細き
を上品とするならハし故胸元より腹迄をしかと〆る
事也とそまた袴ハ是と違ひ無性に広く仕立たる
ものの由足にハ男女とも履をはき大小便の時ハ袴を
操り上けて腰掛にて両用共小弁すると見へ候との事也
島女常服ハ袴繻伴共木綿にて晴れ着にハ繻
子抔着たるも見掛たる由袴をチウセズ繻伴を
コロウスと言男女共頭ハ残切也男分惣身に入墨
あり
県吏役所ゟ折々鑑察島中を巡覧して若シ産業を廃
する者また赤裸に成たる女抔見付たる時ハ折檻を加ふる
由島人是を恐れて業を励ミ衣服を放さすと言漂客
此島にて凡四十日余り逗留中女の裸の体を見すと也
島人女をワヒネと言
島主の居所/茅葦(カヤアシ)にて拾間位の由門番の歩卒鉄炮
を携へ有し由此火器も本邦アメリカより与へし物也とそ
島の内にハ竃鍋釜の類一切なし年中暖か成る物を飲
食すると言事なく常食にハ芋糊りをなめて水を呑
迄也魚類ハ生マにて先腸を吸惣身肉■【窯ヵ】り喰ふと言
元来僻境の貧地故女ハ妻娘に限らす日中にハさしたる
手業もせす徒らに暮らし八ツ時頃ゟ浴して残切髪を
櫛けづり《割書:此髪のときわけ様
にて男女差別有ト言》辻君惣嫁に出面々異国人に身を
売て渡世の足しにす亭主ハ漂客来るを見れハ直に