翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

亜墨利加漂流記聞 - 翻刻

亜墨利加漂流記聞 - ページ 15

ページ: 15

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夜分ハ元船へ帰り寝る最初に此島へ上陸せし時壮年 の夷人壱人海辺に在て漂客を見付各ハ日本人なら すやと声掛し故如何にも我々ハ日本也其許日本語を よく通弁せらるゝハ如何なる人に候哉と尋けれハ我ハ日本 高岡の者也各達此所へ来りし上ハ最早日本へ帰る事 成る間敷と申せし故漂客色を失ひ当惑せしが何故 帰朝不叶哉と尋けれバ予ハ拾弐ケ年已前ニ此所へ 漂着していまた帰る事成らざる也此一儀にて可察併し 此里に古老の日本人三人有得と万事尋候得との事也 し故直様此者に随ひ其宿所に至り見れバ□家と てハ漸膝を入る計りの小家にて狭き家故表の芝 に筵を敷各円座して始終を聞に右四人ハ日本土佐 国高岡郡中の浜と言所の漁師也 一伝蔵 一五右衛門 一虎右衛門 一壮年 万次郎  此内万次郎ハ漂流せし時漸拾壱歳にて幼少成レ共生質才智  ある者故異国舟の加比丹甚た是を愛し自身の子ニ成すべき  積りにてアメリカ本邦へ連帰り五六年の間学文さすけしに  頻る聡明にて読書ハ元より万にさとき者也しが心底の  宜しからぬ者也とて加比丹に見捨られ再此ワフウへ帰り  桶職を習ひて当時此孤島にて桶屋を業として居候由 右四人ハ拾弐ケ年已前釣舟にて漂流し何国かハ知らす 壱ツの無人島へ漂着し  此無人島兼て熊野沖ニ有候島に聞及ビたる鳥島  歟と覚候由 又六月ケ間飯米なく煮物を喰事叶ハす魚を釣て食ひ 諸鳥を叩き落して干物にし是を喰ひ漸飢渇を凌キ 助け船を天地に祈りて待内日数凡百五十日目に 異国舟来掛りし故助命を乞て一同《割書:此異国舟後にアメリカ 船と知れたり》