翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

亜墨利加漂流記聞 - 翻刻

亜墨利加漂流記聞 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

此孤島へ来りしが夫切にて故郷へ可帰方便を知らす此戎国 にて奴僕のごとく役せられ辛苦して暮す内壱人死亡し 残れる所我等四人也先年便りを得て日本地方迄送り 貰ひ或る小島にて是ハ日本所領の島也とておろし 呉候故揚り見れバ草履わらんじの古く切たるが彼なた 此なたに見へたれ共人家ハ無かりし故無拠再度異船に 戻り漸爰迄もどりし也最早我々に於てハ日本へ帰る 事成らすと思ひ定メ此島永住の心ざしに一決し妻を 娶て如此の仕合也近曽此所へ日本熊野の住人善助 と言人摂津国兵庫の船主等と四人連にて来□□が 暫して唐土へ渡り其後また江戸の人と言立派なる 人物三人来り是も無程唐土へ渡りたり此両客我々に 遺言して譬へ我等唐土へ渡り得てももし日本へ帰ること 叶ハぬ時ハ再此所へ来り打連れ倶挊せんと約束 せしが其後今日迄其人の音信を聞す我々は無筆ゆへ 外の者のごとく扱れす唯有て取上ケ呉れる人もなく 口おしき事也五右衛門ハ諸館に薪水の労役□勤メ 虎右衛門伝蔵ハ農夫と成り万次郎ハ諸館或ハ船手へ 雇ハれ壱日に日雇料銀銭三文《割書:此銭壱文ハ日本の銀壱匁 位の割に当り候よし》 貰ひ桶職を業として朝夕身を安くする程のことも□ 苦労して生涯を終るべき我々也其許達帰朝致度 存念ならバ助けられし船司へ折入て一向ら頼ミ候得よ 左候ハヽ品ニ寄万々一帰朝の期も有べきか偏屈固執の 島人ハ頼に足らす島主迚も道理を弁へたる人ならねバ 何を歎く共承引く人に非すと始終を具に聞取り 漂客尋て言ハ某ら古郷へ帰る方便を不知□言事 如何此所ゟ何卒便りを得て已前の両客のごとく 支那へ渡りたらバ彼国よりハ年々両度我日本国へ