翻刻
日本にハ通商なき国より送りてハ受取らぬ
国法なりといふ事故是非不及と申候由
/香港(ホンコン)にて罪人の囚人を此舟え数人積入れ有
しが此しまにて/擲棄(タヽキステ)致候よし此マニラといふ島
ワフウと同し遠洋僻幽島にて島人飲食す
るに飯を椀箸持たず握ミて食しが実に不喫
にして是には甚た困候よし翌日爰を辞して
開帆して数日にして其六月八日に上海といふ所
に着す此処ゟ唐土の県吏人の手に渡り爰に
凡三十日計逗留此/上海(シヤンハイ)にも外邦の商館有之由
此/上海(シヤンハイ)に逗留中或日郡官ゟ日本漂流人御用の書簡
早々都府え可召登旨飛脚到来せりとて迎ひの役
人并駕舁歩卒来りし故漂流人五人外ニ郡官役□
等差添郷尊に随ひ肩駕廿挺計え各打乗道程弐
里計りにして大門え乗付二重□の門ゟ駕籠を下りて
又門を二重入て殿閣を見渡せは眼ニさへぎる物として
心を驚かさゞる事なく心の内に思ひけるは我ら僥倖
を得て異国成れとも斯国主ニ咫せんハ不幸の内の
《見せ消ち:不|》幸也と蜜々悦ひ勧ミ行は敷瓦らの上に毛せんを
引つらね奥深き方の中央ニ侯と覚しき壱人椅子
に掛り頭にハ赤玉を鏤めたる陣笠を戴き
此赤玉の笠印ハ上分のよし其次は金の玉印を用
ひ其下ハ銀段々位階によりて玉印違ひ候よし
絽の薄茶色の夏盛の服にて堂々として見申候美小
年両人其左右ニ侍りて柄長き団扇をもつて君侯
をあふき故右のかたわらにハ漂客掛りの役人と見へて
廿人計り左の側らにハ近侍の官人と覚しき人弐拾
人計り両方に別れて曲彔とか椅木とか言物に掛