翻刻
る案内に随ひ漂客各毛せんの上を履ツをはきなから
勧ミ上り平身低頭して礼を成しけれハ正面の侯
居なからに一揖在余事は通辞役人ゟ応接有り
漂人ハ無言にて控え居る此内に漂客え菓子を賜ふ
各辞儀して取らさりければ側らの官人挟ミ呉たる由
此菓子は大キ成るまんちう成しか中にあんも砂糖
もなくて不味也し由唐人は此もちを甚た賞味
して喰ひ候よし
漂客退ひて長屋の体の所に休息して居る家内国君ゟ
恵ミなりとて漂客え壱人前銭五貫文ツヽ一同呉候よし
公用済而各駕を促し黄昏時に宿え帰る翌日県吏所
より船頭を召出しニ付寅吉壱人早朝に参りしに折
節罪人を刑罰の時に行あひて数人刑罰を見たりと
いふ公用今暫暇取候由にて僕隷歓舞奴芝居え案内致
し呉候故見物せしに鳴物唱歌も定りならす舞踊□
日本言語も不分して面白からずおかしき而已なりし
故一人笑ひを忍びツヽ暫見て役所え帰りけれハ銭三貫
文呉候由此日は差たる公用もなかりしに召出したるハ
彼罪人ともの刑罪を見せん為而已に有之に哉
と覚候由或は此/上海(シヤンハイ)にて方廿間計に構えたる三階迄に造
りし花美の家ゟ招かれし時行て二階に登り窓の
廻り四方に掛たる額を見れハ日本姿の軍兵数多夷
人に召捕れたる図本は乱妨する日本を画たり亦三
階に登りて見るに同しき四方の額に夷人和人を
刑罰する画を掛けて有しゆへ是ハ如何なる事ならん
と尋けれは唐人の答に是は其昔し日本ゟ盗賊
此国の端島え押渡り民家を悩まし乱妨セし故当国
王ゟ軍勢を以て召捕り其趣日本え伺せしに日本ゟ