翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

亜墨利加漂流記聞 - 翻刻

亜墨利加漂流記聞 - ページ 5

ページ: 5

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知らす知る人とてもなし万事ニ付憂き事有る漂流人の 眼前にて船中に数拾疋/繋(ツナ)ぎ有し獅子のごときものを 引出し差殺シ喰ふ形状を見て一身戦慄し此船 海賊罪人ならすや後日にハ我々をも如此喰殺すならん かとおそろしく針の莚に座する心地せしがまた過て思按 するに彼等我漂船の荷物にさゝハらす聊物を取らざりし 様子を思へバ賊船にハ有まじく又此舟に繋きたる物ハ獅子 に非す/豕(ブタ)なり抔と各許してやゝ胸落付少し安心したり しとの始終亦乗船の始メ二三日が程ハ食事少しづゝならで ハ喰セす候故空腹のまゝ船子を■【譏カ】りつぶやき空鍋空櫃 を叩きて喰事を乞ひ求めたれ共与へすして後チ四日 目程ゟハ腹一はい存分ニ可喰ニて仕かたにてすゝめ呉たり と云事また漂客等船中に米有事を捜索て取 出し是を焚て呉よと手真似して乞しに船司横点頭して 米を喰てハ眼を煩ひ足腫れて日本へ帰る事叶はすやはり 肉喰して無事に故郷へ帰るべしと/慇懃(ネンゴロ)に/諭(サト)しくれたり との話又異国舟の者共漂客之内吉松左蔵ハ年若き故 にや養子にほしがり候得共何分右両人古郷へ帰る心切なれば 其求に応ぜざりしかバ彼レ等兎角おどし歎き両人をアメリカ の本国へ連れ帰らんとせし様子故両人申合セ謀て元船 を抜け出て便船へ乗移りし話しを初として其外丸二ケ 年の間警衛を凌き護送を得て数千里外の絶域に 至り親敷其実を見また遥々と帰朝せし咄数々御座候得共 至愚の私事ニ候得者耳にハ聞ながら色々混雑して其事情を 詳ニ憶記する事能はす然も文続前後して彼是疎漏な□こと 兼て御案内之通盲筆無識の止事を得ざる処ニ御座候而実ニ 裘を隔て痒きを掻き候如くの事のミ毎々多かるべしと存候 勿論不文なる識にて《見せ消ち:不分なる|》なる目に知らざる所の異説を聞書せし