翻刻
【右丁】
万事(ばんじ)懈怠(けだい)は不 成就(じやうじゆ)の本(もと)
足(た)る事(こと)を知(し)らぬものは生涯(せうがい)貧者(ひんじや)
たる事(こと)を知(し)るは身(み)家(いへ)の良薬(りやうやく)
小事(せうじ)にかゝわるは身(み)の大事(たいじ)を知(し)らぬもの
我(わ)が一 大事(だいじ)をおもふは大楽(たいらく)を得(う)る下地(したぢ)
善悪(ぜんあく)知(し)るは智(ち)ある愚人(ぐじん)
ぜんあく知(し)らざるは愚(ぐ)成(な)る知者(ちしや)
右六十六ヶ条
寝(ね)むらずば夢(ゆめ)も見(み)まじを朝夕(あさいふ)に
ねさすや起(おこ)す見聞覚知(けんもんかくち)
【左丁】
高家御宝物御秘書(かうかごほうもつごひしよ)写(うつし)
一御舎弟(ごしやてい)何某殿(なにがしどの)兼々(かね〴〵)御病身(ごびやうしん)の御様子(ごようす)扨々(さて〳〵)たゑがたく
気(き)の毒(どく)に存(ぞんじ)候 拙僧(せつそう)儀(ぎ)は医道(いどう)は不存(ぞんぜず)候得共 平日(へいじつ)容体(ようだい)見(み)
聞(きゝ)いたし罷在(まかりあり)候 医師(いし)は何(なに)と申やらむ不存(そんぜず)候得ども畢(ひつ)
竟(けう)皆(みな)愚痴(ぐち)よりの病(やま)ひにて自作(じさく)自病(じひやう)と申 物(もの)に候 全体(ぜんたい)
気性(きせう)は正敷(たゞしく)温和(をんくわ)成(な)れども狭(せま)く小(ちつ)さき了簡(りやうけん)より
して物毎(ものごと)わきまひ付(つき)がたくあだ成(なる)心労(しんらう)苦痛(くつう)多(をう)く
心(こゝろ)の安(やす)き間(ま)なし仍(よつ)て我(わ)がすく所(ところ)の女色(じよしよく)を当時(とうじ)
々々(〳〵)の鬱散(うつさん)たのしみと思(おもひ)ひ【衍】度々(たび 〳〵)に身(み)を削(けづ)り月(つき)
々(〱)に衰(おとろ)へ追々(をひ〳〵)虚労(きよらう)し終(つゐ)に内外(はいぐわい)とも痩(やせ)枯(か)れ死(し)