翻刻
【右丁】
必定(ひつぢやう)なりこの場(ば)に臨(のぞ)み何程(なにほど)の明医(めいい)を得(ゑ)鍼灸(しんきう)薬(やく)を
以(もつ)て治(じ)せんとするとも寸功(すんかう)無(な)し元来(ぐわんらい)自作(じさく)自業(じごう)な
ればいかんとも致(いたし)がたく又(また)年子(としご)抔(など)と申物(もうすもの)は全(まつた)く亭主(ていしゆ)
の色欲(しきよく)なる証拠(せうこ)に候 其訳(そのわけ)は三年振(さんねんぶり)に出生(しゆつせう)候 得(へ)ば母(はゝ)の
痛(いた)みも無之(これなく)候 然(しか)るに年子(としご)出生(しゆつせう)はいまだ母(はゝ)の胎内(たいない)
とゝのひ申さぬ内(うち)交合(かうがう)いたす故(ゆへ)早(はや)く懐妊(くわいにん)いたす
事(こと)に候 母(はゝ)胎内(たいない)のどうぐ元々(もと〳〵)へ納(おさま)り夫(それ)より又(また)初(はじま)
り候へば早(はや)くして三年 振(ぶり)ならでは出生(しゆつせう)なき物(もの)に
候 年並(としなみ)と懐妊(くわいにん)いたすはいまだ胎内(たいない)の道具(どうぐ)元々(もと〳〵)へ
かたづかずそこらに取散(とりちら)しある所(ところ)へしかけ候 故(ゆへ)
【左丁】
ふきそうじ致(いた)す間(ま)もなく直(すぐ)に用(もち)ひ候 様(よう)なる道(どう)
理(り)ゆへどうぐ損(そん)じ剰(あまつさ)へ夫々(それ〳〵)に元(もと)の所(ところ)へ納(おさま)りがたく
候ゆへ年子(としご)三四人も出生(しゆつせう)候 得(へ)ばつゐには難産(なんざん)出来(でき)候か
胎内(たいない)いたみ居(を)り候ゆへ産後(さんご)を疾来(しつらい)候か第(だい)一 夫(をつと)の気(き)
せうを案(あん)じ苦労(くらう)し多勢(たせい)の子供(こども)の養育(よういく)親(をや)の
心(こゝろ)をかねそれを思(おも)ひこれを心労(しんらう)し乳(ち)なども出(いで)ぬ
様(よう)になりてます〳〵苦労(くらう)多(おう)くなり左様(さよう)の処(ところ)より
産労(さんろう)或(あるひ)は労疫(らうへき)などわづらい終(つゐ)に命(いのち)をうしなひ
候 様(よう)になり行(ゆく)もの世間(せけん)そのためしかずを知(し)ら
ず又(また)何某殿(なにがしどの)義(ぎ)右体(みぎてい)病(びやう)者にて今年(こんねん)四 拾(じう)三 才(さい)の