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【右丁】
になれとの義(ぎ)なり我(わ)が身(み)は家(いへ)の本(もと) 本(もと)立(たゝ)ざれば末(すへ)
ならず我(わ)が安堵(あんど)ならで妻子(さいし)下人(げにん)いかで安心(あんしん)得(へ)させら
るべき親子(をやこ)夫婦(ふうふ)主従(しうじう)一和(いつくわ)して安穏(あんをん)なるを家(いへ)
斉(とゝな)ふと云(い)ふなり是(これ)一家和合(いつかわがう)するの根元(こんげん)にて愚(ぐ)
昧(まい)文盲(もんもう)と云(い)へどもこれをわきまへ知(し)るを知者(ちしや) 道(どう)
者(しや)といふなり知(ち)不 知(ち)をいはずたとひ八万余経(はちまんよけう)十
三 経(けう)すべて諸道書(しよどうしよ)よくそらんじさとし広学(こうがく)
博識(はくしき)といふとも神仏(しんぶつ)聖賢(せいけん)名将(めいせう)都(すべ)て有徳(ゆうとく)の心
を取(と)らず只(たゞ)道理(とうり)義理(ぎり)のみにわたりてこれを
得(へ)ざる時(とき)は何(なに)の学功(がくかう)なく只(たゞ)事知(ことし)り物知(ものし)りなれ
【左丁】
ば朝夕(てうせき)起臥(きぐわ)種々(しゆ〴〵)の念慮(ねんりよ)絶(た)へざれば不 如法(によほう)不 義(ぎ)
の汚名(をめい)をはつし時々(じ〳〵)に身心(しんしん)をくるしめ終(つゐ)に
は病(やまひ)を求(もと)めたま〳〵請(うけ)がたき人身(じんしん)を受(うけ)いまだつ
きざる命(いのち)を果(はた)し妻子(さいし)を惑(まど)はし家(いへ)をかたむ
け不 孝(かう)不義(ぎ)の汚名(をめい)をうくるも我(わ)が一身(いつしん)の愚昧(ぐまい)
よりなす事(こと)上(うへ)なき損(そん)恥(はぢ)恐(おそ)るべきなり世間(せけん)し
ゆ〴〵の法(ほう)は只(たゞ)執着(しうじやく)を忌(い)む一 切(さい)とゞめざれば記(き)
憶(をく)する事(こと)なし善悪(ぜんあく)水中(すいちう)の月(つき)是非(ぜひ)空裏(くうり)【注】の
花(はな)何(なに)をか取捨(しゆしや)せん苦楽(くらく)本(もと)無主(むしゆ)思慮分別(しりよふんべつ)より
おこる是(これ)を有為(うい)の凡愚(ぼんぐ)といふ一 念(ねん)不 生(せう)にして
【注】虚空、空中