翻刻
【右丁】
はさし置(をき)只(たゞ)愚昧(ぐまい)文盲(もんもう)の分際(ぶんざい)として此方(このほう)に向(むかつ)て
何(なに)たわ言(こと)とるに足(た)らずと心(こゝろ)に見下(みさ)げ候 場(ば)より聊(いさゝか)も
用(もち)ひ候 所(ところ)には至(いた)らず文盲(もんもう)の其方(そのほう)などより抜群(ばつくん)劣(をと)
りたる不心行(ふしんげう)聊(いさゝか)はづる心(こゝろ)もつかず数年来(すねんらい)読(よ)み学(まな)
びたる功(こう)はなく却(かへつ)て害(がい)となり候 義(ぎ)今日(こんにち)漸(やうや)く発明(はつめい)
いたし候 此(この)御教書(みけうしよ)御実意(ごじつい)深(ふか)き段(だん)誠(まこと)に感入(かんにう)いたし
不計(はからず)涙(なみだ)を浮(うか)め候 是(これ)までの所存(しよぞん)にては か様(よう)の書(しよ)など
半紙(はんまい)も見(み)候 了簡(りやうけん)は絶(たへ)てこれなく只(たゞ)文体(ぶんてい)善悪(ぜんあく)のみ
見(み)て意味(いみ)の浅深(せんしん)虚実(きよじつ)【「ゆ」は誤】にはいさゝか心(こゝろ)も寄(よ)せず女(をんな)
童(わらべ)の見(み)るべきものと心(こゝろ)もとめざるに風(ふ)と其方(そのほう)実意(じつい)
【左丁】
を感(かん)じおもわず実意(じつい)おこり熟覧(じゆくらん)し信実(しんじつ)の場(ば)へ
こゝろ附(づき)候 得(へ)ば文作(ぶんさく)【左ルビ:ふみづら】の善悪(よしあし)には心(こゝろ)も寄(よ)らず悉(こと〴〵)く実(じつ)
意(い)深切(しんせつ)の段々(だん〳〵)にかんじ入(い)る計(ばかり)に候 其方(そのほう)実意(じつい)よりして
時(とき)を得(へ)信(まこと)の一 字(じ)を受得(じゆとく)し難有(ありがたく)是(これ)まで愛相(あいそう)も
つかさず年来(ねんらい)の実意(じつい)身(み)にしみ忘(わす)れおかず候か
様(よう)なる結(けつ)かうの書(しよ)手(て)に入(いり)候も畢竟(ひつけう)その方(ほう)色々(いろ〳〵)
心配(しんはい)くれ候 実意(じつい)より出来(でき)候 義(ぎ)に候 得(へ)ば重々(ぢう〳〵)満足(まんぞく)
に候 仍(よつ)てまづ別荘(べつそう)の女(をんな)にはいとま遣(つかわ)し可申(もうすべく)間(あいだ)能(よき)
ように取(とり)はからひ呉(くれ)たく また遊女(ゆうじよ)の義(ぎ)急度(きつと)相
止(や)め《振り仮名:可_レ申|もうすべく》若(もし)以後(いご)におひて何(なに)によらず不 心行(しんげう)の義(ぎ)