翻刻
【右丁】
物(ぶつ)の食物(しよくもつ)を断(た)ち塩物(しをもの)をたち或(あるひ)は数(す)十日 精進(せうじん)し立願(りうぐわん)
をこめ七昼夜(しちちうや)つめ候 義(ぎ)も有之(これあり)または神子(みこ)を頼み
先祖(せんぞ)の事(こと)を問(と)ひすぎ去(さ)りし両親(りやうしん)の義(ぎ)を尋(たづ)ね所(しよ)
々(〳〵)祈念(きねん)祈祷(きとう)諸神(しよじん)諸仏(しよぶつ)の守札(まもり)其外(そのほか)占(うらな)ひ人相(にんそう)墨(すみ)い
ろまで残(のこ)る所(ところ)なく転倒(てんどう)いたし候 然(しか)るに是(これ)ぞ印(しるし)
( うろたえ)
あり是(これ)ぞ相応(そうをう)いたし候と覚(おぼ)へ候 義(ぎ)只(たゝ)一ヶ条(でう)もこれなく
尤(もつとも)大医(たいい)と承(うけたまわ)り転薬(てんやく)いたし候 節(せつ)亦(また)は名灸(めいきう)或(あるい)は立(りう)
願(ぐわん)などこめ候 節(せつ)当分(とうぶん)心地(こゝち)よく覚(おぼへ)候 義(ぎ)有之(これあり)候 得(へ)
ば薬功(やくこう)と思(おも)ひ利生(りせう)【注】とおもふ皆(みな)我(わ)が心持(こゝろもち)より作(な)す義(ぎ)
にて当分(とうぶん)ざんじ心(こゝろ)よく覚(おぼ)ゆるまでにて亦(また)元(もと)の如(ごと)
【左丁】
く何(なに)も替(かわ)りたる義(ぎ)無之(これなく)全(まつた)く医師(いし)がたに恨(うら)みなく薬(くすり)
に科(とが)なく神仏(しんぶつ)に不 足(そく)なく罪科(つみとが)は只(たゞ)自己(じこ)一人にあり
て神仏(しんぶつ)医薬(いやく)鍼灸(しんきう)の知(し)る義(ぎ)にこれなく自作(じさく)自病(じびやう)
と存(ぞん)ぜず一図(いちづ)に病(やま)ひとのみ心得(こゝろへ)年来(ねんらい)苦痛(くつう)いたし
候も愚智(ぐち)迷妄(めいもふ)の作(な)す所(ところ)にて他(た)のしる所(ところ)にこれ
なく其頃(そのころ)時気(じき)に中(あた)り熱症(ねつせう)或(あるい)は痢疾(りしつ)腫気(しゆき)類(るい)
など病(や)み候はゞ命(いのち)も無之(これなく)所(ところ)に候 今(いま)世間(せけん)人々(ひと〴〵)貴賤(きせん)男(なん)
女(によ)をいはず十人に八人 持病(ぢびやう)あり病症(びやうせう)種類(しゆるい)数々(かず〳〵)
有(あ)れば病名(びやうめい)は存(ぞん)ぜず候 得(へ)ども皆(みな)こと〴〵く自業(じごう)
自作(じさく)に候 得(へ)ば自心(じしん)の療治(りやうじ)ならでは病根(ひやうこん)絶(た)ゆる
【注 仏の御利益】