翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: コレクション4

養生長寿秘伝鈔 2巻 - 翻刻

養生長寿秘伝鈔 2巻 - ページ 32

ページ: 32

翻刻

【右丁】  事(こと)有(あ)るべからず候 都(すべ)て自作(じさく)自病(じびやう)を鍼灸(しんきう)薬(やく)を以(もつて)  治(じ)せんとするは己(おのれ)が盗(ぬす)み取(と)りし物(もの)を他(た)人に償(つぐな)【價は誤】わさ  んとするがごとし誰(たれ)か是(これ)を用(もち)ひ候や自病(じびやう)自苦(じく)は  自心(じしん)療(りやう)じ自心(じしん)除(のぞ)かずして病苦(ひやうく)とも去(さ)るべからず  只(たゞ)養生(ようぜう)平日(へいじつ)にあり病時(やむとき)にのぞみ医薬(いやく)鍼灸(しんきう)を頼(たの)  みにおもふは愚昧(ぐまい)のいたりにておそく候 既(すで)に古人(こじん)渇(かつ)  に臨(のぞ)みて井(い)を掘(ほ)る事(こと)勿(なか)れと。一郎(いちらう)物(もの)がたりに恬(てん)  澹(たん)虚無(きよむ)なれば真気(しんき)是(これ)にしたがふ精神(せいしん)内(うち)に守(まも)  らず病(やま)ひ何(いづ)れより来(きた)らむと医書(いしよ)に有之(これある)よし恬(てん)  澹(たん)虚無(きよむ)とは心中(しんちう)一 物(もつ)貯(たくわ)へず安(やす)く寂(しづか)にして万(ばん) 【左丁】  事(じ)その物(もの)ごとに任(まか)せつくろひ飾(かざ)りなく有(あり)のまゝにて  病(やむ)ともおもわず病(やま)ぬとも知(し)らず不 生(せう)にして無(ぶ)  事(じ)の義(ぎ)なるよしさあらば病根(びやうこん)何(いづ)れにかある誰(たれ)か是(これ)  病(や)む人 元来(くわんらい)皆(みな)人 六根(ろくこん)【注】清浄(せう〴〵)にて銘々(めい〳〵)心君(しんくん)安寧(あんねい)な  れば皆(みな)是(これ)無病(むびやう)の者(もの)。御(ご)不 審(しん)あるべし 一 野老(やらう)義(ぎ)前段(ぜんだん)の通(とう)り数年来(すねんらい)妄病(もうびやう)にて苦(くるし)み候 得(へ)者(ば)  中年(ちうねん)まで存命(ぞんめい)もいたす間敷(まじく)存居(ぞんじをり)候 所(ところ)主人 一郎(いちらう)  妄病(もうびやう)野老(やらう)幸(さいわ)ひと成(な)り右(みぎ)御教諭書(ごけうゆしよ)はからず拝読(はいとく)  いたし愚智(ぐち)文盲(もんもう)の野老(やらう)心耳(しんじ)にいりかんじ奉(たてまつ)り  身骨(ほねみ)にこたへありがたく存(ぞん)じ猶(なを)又(また)学才(がくさい)有(あ)る一郎(いちらう) 【注】ろくこん 眼・耳・鼻・舌・身・意