翻刻
【右丁】
御影(をんかげ)を以(もつ)て業病(がうびやう)治(じ)し身(み)は堅固(けんご)に相 成(なり)候 得(へ)ども未(いまだ)
心病(しんびやう)治(じ)しがたく朝暮(てうぼ)なやみ六根(ろくこん)手足(てあし)も自由(じゆう)相 成(な)
らず何(なに)とぞ明医(めいい)を得(へ)良薬(りやうやく)服用(ふくよう)いたし度(たく)是(これ)のみ
願望(ぐわんもう)に候と答(こた)へ候へば一 郎(らう)其方(そのほう)誠(まこと)にありがたき
志(こゝろざし)かんじ入(いり)候 此方(このほう)も同志(どうし)にて 符(わりふ)を合(あわ)せたる如(ごと)くに
候 何卒(なにとぞ)時(とき)を得 名師(めいし)を求(もと)め ともに真心(しんじん)決定(けつでう)いた
し度(たく)本(もと)立(たゝ)ざれば末(すへ)ならず本(もと)は一心(いつしん)なり万法(ばんほう)の 根(こん)
元導師(げんどうし)を得(へ)ずんば争(いかで)決定(けつでう)なるべきやと。野老(やらう)猶(なを)
又(また)かんじ入(いり)候 愚意(ぐい)所存(しよぞん)に安堵(あんど)いたし候は只(たゞ)心持(こゝろもち)を転(てん)
じ候ばかりにて決心(けつしん)いたしたる儀(ぎ)は無之(これなく)夫(それ)ゆへ疑(うた)がわ
【左丁】
しき不 審(しん)の義(き)抔(など)あまた有之(これあり)候 得(へ)ばをきふし心(こゝろ)す
まず罷在(まかりあり)候 誠(まこと)に有(あり)がたき思召(おぼしめし)に候 道義(どうぎ)有(あ)るかた御(をん)
聞(きゝ)およびなど無之(これなく)哉(や)尋(たづ)ね候 得(へ)ば兼々(かね〳〵)聞(きゝ)および居(をり)候
方(かた)も有之(これある)よしにて当時(とうじ)知識学僧(ちしきがくそう)と承(うけたまわ)り候 禅僧方(ぜんそうがた)
道人(どうにん)と聞及(きゝおよ)び候 方々(かた〴〵)所々(しよ〳〵)へ立寄(たちよ)り御教示(をんけうし)亦(また)講訳(こうしやく)【注1】な
ど聴聞(てうもん)いたし候 所(ところ)多分(たぶん)礕岩(へきがん)【ママ 注2】金剛経(こんがうけう)又(また)は法花経(ほつけけう)諸(しよ)
経中(けうちう)の要語(ようご)諸祖(しよそ)の語録(ごろく)聖賢(せいけん)の諸書(しよしよ)明語(めいご)明句(めいく)抔(など)
にて御示(をんしめ)し且(かつ)御講釈(ごかうしやく)候へば尊(とうと)き儀(ぎ)に候 得(へ)ども心根(しんこん)
に聢(しか)と徹(てつ)し候 義(ぎ)曽(かつ)て無之(これなく)候 得(へ)ば二度(ふたゝび)したふ所(しよ)
存(ぞん)無之(これなく)如何(いかゞ)せんと朝暮(てうぼ)是(これ)のみ主従(しう〴〵)歎(なげ)き居(をり)候 折(をり)
【注1 訳は釈の誤記】
【注2 碧巌録ヵ】