翻刻
【右丁】
人々(ひと〳〵)具足(ぐそく)し円成(ゑんじやう)して神聖(しんせい)仏(ぶつ)我々(われ〳〵)同体(どうたい)にて尊卑(そんひ)
なし自己(じこ)愚迷(ぐまい)よりして悟道(ごどう)発明(はつめい)は濁世(ぢょくせ)の我々(われ〳〵)
及所(およぶところ)にあらず只(たゞ)神仏(しんぶつ)を拝礼(はいれい)し願(ねがい)【「い」は衍】ひ 頼(たの)み功力(くりき)によ
つて安心(あんじん)すといへば聞(きく)ものまた同心(どうしん)して然(しか)りとす
是(これ)一 盲(もう)衆盲(しうもう)を引也(ひくなり)世間(せけん)に清濁(せいだく)なく道(みち)に古今(こきん)
なし信(しん)じ守(まも)らざるが故(ゆへ)に天罰(てんばつ)をうく古徳(ことく)の云(いわく)
《振り仮名:天與 不_レ取 還 受_二其罪_一|てんあたふるにとらざればかへつてそのつみをうく》。と自心(じしん)を信(しん)ぜずして神仏(しんぶつ)
あるひは経巻(けうくわん)を信(しん)ずるは名(な)を信(しん)じて実体(じつたい)を信(しん)ぜず
影(かげ)を尊(たつとみ)て像(かたち)を見(み)ざるが如(ごと)し 影(かげ)とは色身(しきしん)也(なり)像(かたち)とは
自性(じせう)なり見聞(けんもん)覚知(かくち)。の主人(しゆじん)也 ̄リ影(かげ)に惑(まどへ)るものは形(かたち)を
【左丁】
見(み)るに如(し)かず此(この)主人公(しゆじんこう)に相見(そうけん)せずして迷妄(めいもう)を去(さ)る事(こと)
有(ある)べからず此(この)公(こう)の外(ほか)尊信(そんしん)すべき物(もの)無(な)し書(しよ)は言(こと)を
尽(つく)さず言(こと)は心(こゝろ)をつくさずと。上天(せうてん)の載(こと)は《振り仮名:無_レ聲無_レ臭|おともなくかもなし》。
亦(また)四十九 年(ねん)一字(いちじ)不 説(せつ)言語道断(ごんごどうだん)心行所滅(しんげうしよめつ)。と三 日(か)三 夜(よ)
拝聴(はいてう)し奉(たてまつ)り言外教外(ごんぐわいけうげ)の御口伝(ごくでん)を受(うけ)。〽散(ち)る花(はな)の
咲(さか)ぬむかしの隠家(かくれが)を明(あか)せよ春(はる)の風(かぜ)吹(ふか)ぬまに。
との一首(いつしゆ)を頂戴(てうだい)いたし誠(まこと)に身心(しん〳〵)に徹(てつ)し筋骨(きんこつ)に
しみ有難(ありがた)き義(ぎ)猶(なを)禅師(ぜんし)の御教諭書(ごけうゆしよ)且(かつ)法語(ほうご)何某(なにがし)
公(こう)の御遺書(ごゆいしよ)等(など)此度(このたび)はじめて有難(ありがた)く拝読(はいとく)いたし
言舌(ごんぜつ)の及(およ)ぶ所(ところ)になく心(こゝろ)を以(もつ)て心(こゝろ)に伝(つた)ふのみ。愚昧(ぐまい)