翻刻
【右丁】
之(の)野老(やらう)別(べつ)して及(およ)ばざる大事(たいじ)のみ此(この)前段(ぜんだん)書記(かきしる)し候も
皆(みな)一郎(いちらう)加筆(ひつりき)を以(もつ)て斯(かく)の如(ごとく)に候 《割書:野老》認(したゝ)めは申に及(およば)ず
一郎(いちろう)遺書(ゆいしよ)都(すべ)て別書(べつしよ)の類(るい)文段(ぶんだん)の前後(ぜんご)又(また)は誤字(ごじ)片(かた)
言(こと)始終(しじう)とも拙(つた)なきに心(こゝろ)を留(と)めず只(たゞ)銘々(めい〳〵)一大事(いちだいじ)を
先立(さきだて)心眼(しんがん)を以(もつて)熟覧(じゆくらん)有之(これあり)候はゞ足(た)る事(こと)を知(し)り真楽(しんらく)
を得(う)るの一(ひと)つの助(たす)けとなるべく存(ぞん)じ奉(たてまつ)り候て愚意(ぐい)書(かき)
添(そへ)のこし。置(をき)候
一 一郎(いちろう) 《割書:野老》主従(しう〴〵)とも禅師(ぜんし)翁(をう)二 尊師(そんし)の大慈(だいじ)大悲(だいひ)の
高恩(かうおん)をかふむり両人(りやうにん)とも危(あやう)き命(いのち)を助(たす)かり何(なに)を以(もつ)
てか恩(をん)を報(ほう)じ徳(とく)を謝(しや)すべくやう無之(これなく)候へば銘々(めい〳〵)ども
【左丁】
自作(じさく)自病(じびやう)にくるしみ悩(なや)み候 数年来(すねんらい)の迷妄(めいもう)愚智(ぐち)
白地(あからさま)に書(かき)しるし候は全(まつた)く上(かみ)たるにも下々(しも〴〵)にも貴賤(きせん)
男女(なんによ)をいはず自身(じしん)心(こゝろ)に写(うつ)し是(これ)を熟覧(じゆくらん)有(あ)らば
御心中(ごしんちう)に通徹(つうてつ)候 義(ぎ)多少(たせう)はしらずこれ有(あ)るべく候 左(さ)
( あたり)
あれば道義(どうぎ)に本(もと)づき真(しん)の養生(ようぜう)便(たより)とも成(な)らむか
と愚昧(ぐまい)文盲(もんもう)つたなきも忘(わす)れ書残(かきのこ)し置(をき)候 後世(かうせい)の
人々(ひと〴〵)心用(しんよう)ありて信(しん)の養生(ようぜう)導(みちびき)とも相 成(なり)候はゞ銘々(めい〳〵)ども
いさゝかの報恩(ほうをん)謝徳(しやとく)とも相 成(なる)べくとかならず他(た)の義(ぎ)
に無之(これなく)自身(じしん)一人の御事(をんこと)に候 二師之(じしの)道教(どうけう)一郎(いちろう) 遺(ゆい)
書(しよ)御熟覧(ごじゆくらん)候て信用(しんよう)有(あ)らば足(た)る事(こと)を知(し)り安堵(あんど)を