翻刻
【右丁】
しからねば鳥獣(てうぢう)草木 万物(ばんぶつ)の心(こゝろ)善悪(ぜんあく)不 同(どふ)し其中(そのうち)
( とりけだもの)
に万物の霊長(れいちやう)なる人 間(げん)だに等(ひと)しからず水も交(まじ)ら
ぬ親子(おやこ)兄弟(けうだい)と云(い)へども不同(ふどふ)有(あり)て善心(ぜんしん)有(あ)り悪心(あくしん)
有れば此(この)善悪(ぜんあく)を正(たゞ)し改(あらた)むるは只(たゞ)此(この)一 心(しん)一心 而(しか)も
無体(むたい)也 御中主明徳妙(みなかぬしめいとくめう)皆(みな)一心の異名(いめう)也 全(まつた)く心外(しんげ)無(む)
( かへな) ( こゝろのほか べつの)
別法(べつぽう)余念(よねん)無用(むよう)
( ほうなし)
呑(の)まねとも我(われ)は日々(ひゞ〳〵)酔(ゑ)ひくらすうたふも
まふも法(のり)の道(みち)にて
七十九歳
八郎兵衛 述
長寿秘伝鈔(ちやうじゆひでんしやう) 上 畢
【左丁】
養生長寿秘伝鈔 下
一郎(いちらう)遺書(ゆいしよ)之(の)内(うち)書抜(かきぬき)《割書:并ニ》教戒(けうかい) 《割書:八郎兵衛》
伊久堂(いくた)ひか思(おも)ひさためて かわるらむ頼(たの)むましきはこゝろ
なりけり。との古哥(こか)よく〳〵思惟(しゆい)あり度(たく)《割書:老拙》中年(ちうねん)
病気(びやうき)の砌(みぎり)養生(ようぜう)心得(こゝろへ)且(かつ)身行(しんげう)の儀(ぎ)出家方(しゆつけがた)学友(がくゆう)懇意(こんい)
間(あいだ)老人方(らうじんがた)親類(しんるい)老分(らうぶん)の者(もの)種々(しゆ〳〵)深切(しんせつ)に異見(いけん)教訓(けうくん)に
あづかると云(い)へどもいさゝか心用(しんよう)所存(しよぞん)なく数度(すど)に及(およ)び
てはうるさく思(おも)ひ道理(とうり)無(な)き所(ところ)に道理(どうり)を付(つ)け聖賢(せいけん)
の言葉(ことば)を引(ひき)手前勝手(てまえがつて)の理屈(りくつ)を云(い)ひ只(たゞ)一図(いちづ)に病(びやう)
気(き)とのみ心得(こゝろへ)気随(きずい)放埓(ほうらつ)募(つの)り只(たゞ)医薬(いやく)のせんさく