翻刻
【右丁】
やうは斯(かく)の如(ごと)き御教諭書(ごけうゆしよ)入手(てにいる)も前段(ぜんだん)のぶる所(ところ)の信(しん)
の一字(いちじ)に不 審(しん)立(たつ)も 亦(また)此(この)御教書(みけうしよ)尊(たつと)み信用(しんよう)いたすも
心行(しんげう)あらたむる所存(しよぞん)決(けつ)するも 悉(こと〴〵)く皆(みな) 八郎兵衛 一人の
まことより発生(はつ)しければ今(いま)我(われ)八郎兵衛なくば一命(いちめい)
を失(しつ)し父祖之家名(ふそのかめい)も断絶(だんぜつ)し妻子(さいし)にも苦患(くげん)を
見(み)すべしさあれば何(なに)を以(もつて)か此(この)恩(をん) 八郎兵衛に謝(しや)す
べきや只(たゞ)先(まづ)八郎兵衛 存意(ぞんい)を心用(しんよう)し守(まも)るの外(ほか)なく
是(これ)を報恩(ほうをん)と心得(こゝろう)るのみ右(みき)御教諭書(ごけうゆしよ)道義(とうき)意旨(いみ)は
格別(かくべつ)身行(しんげう)の儀(ぎ)は兼(かね)て心得居(こゝろへいる)義(ぎ)亦(また)御文体(ごぶんてい)平和(へいわ)なが
らも麤文(そぶん)なれば前々(まへ〳〵)の心底(しんてい)にては見下(みくだ)し一覧(いちらん)致(いた)す
【左丁】
所存(しよそん)もこれなき所(ところ) 八郎兵衛 篤実(とくじつ)より信(しん)の一字(いちじ)に心付(こゝろづ)き
姿形(なりふり)を見(み)ず心体(こゝろ)を取(と)る所存(しよぞん)よりして真実(しんじつ)の御教示(ごけうし)
と感入(かんにう)し見読(けんとく)いたす事(こと)にて全(まつた)く皆(みな)八郎兵衛 影(かけ)也
恩(をん)なり八郎兵衛 義(ぎ)は実語教(じつごけう)童子教(どうじけう)の類(るい)は習(なら)ひ
読(よ)むとも孝教(かうけう)一 冊(さつ)素読(そどく)いたしたる者(もの)にこれ無(な)く愚(ぐ)
昧(まい)文盲(もんもう)なれども信心(しんじん)堅固(けんご)の勇(ゆう)は衆人(しうしん)にこゑ稀(まれ)成(なる)
ものに候
八郎兵衛 義廿余才の頃(ころ)より持(ぢ)病 発(はつ)し病 数(すう)あまた
にてせん気(き)治(じ)すれば胸(むね)ふさがり胸ひらけば亦(また)停(てい)
滞(たい)し或(あるひ)は逆上(ぎやくでう)して頭痛(づつう)目(め)まひ立(たち)ぐらみ肩(かた)