翻刻
【右丁】
脊(せ)など痛(いた)み心地(こゝち)能(よ)き日(ひ)とては半日(はんにち)も無之(これなく)様子(ようす)
なれば数人(すにん)の医師(いし)鍼灸薬(しんきうやく)名薬(めうやく)名点(めいてん)加持(かぢ)祈祷(きとう)
神仏(しんぶつ)立願(りうぐわん)など種々(しゆ〳〵)手(て)を尽(つく)し心(こゝろ)をつくすと
いへども是(これ)ぞ相応(そうをう)し是(これ)効(こう)と覚(おぼ)ゆる義(ぎ)曾(かつ)て無(な)
く最早(もはや)手(て)もつき仕方(しかた)なければ何卒(なにとぞ)四十 歳(さい)ご
ろまで長命(ながらへ)呉(く)れかしと祈(いの)り居(をり)ける所(ところ)実(じつ)
徳(とく)に依(よ)りはからず万病(まんびやう)の一薬(いちやく)を拝服(はいふく)し近来(きんらい)
は中年(ちうねん)より追々(をい〳〵)壮健(そうけん)に成(な)り当年(とうねん)七十八才にて
耳(みゝ)目(め)足(あし)腰(こし)中年の及(およ)ばざる程(ほど)の達者(たつしや)なり
右(みぎ)数病(すびやう)も本(もと)一 病(ひやう)にて篤実(とくじつ)の気性(きせう)なれば万事(ばんじ)
【左丁】
不 実(じつ)をきらひ違(たが)ふ事(こと)をきらふと云(い)へども衆人(しうじん)左(さ)
は仕向(しむけ)ず既(すで)に我等(われら)一人の妄病(もふびやう)不 心行(しんげう)にも何程(なにほど)
か労(らう)し只(たゞ)実心一 筋(すじ)にて心中の捌(さば)き物事(ものごと)明(あき)らめ
わきまふ智(ち)足(た)らざるより苦労(くらう)絶(た)へず夫(それ)より
して右(みぎ)持病(ぢびやう)を発(はつ)し苦(く)に苦(く)をかさね右体(みぎてい)
病者(びやうじや)と成(な)りたるにて彼(かれ)も時節(じせつ)を得(へ)危(あやう)き身(しん)
命(めい)を助(たす)かり両人(りやうにん)諸友(もろとも)寿齢(よわい)をたもつ事(こと)不 思(し)
義(ぎ)とや言(い)ふへき禅師(ぜんし)白山翁(はくさんをう)二 師(し)之(の)御慈恩(ごじをん)道(どう)
恩(をん)何(なに)をもつてか謝(しや)すべき
八郎兵衛 道心(どうしん)深(ふか)く信力(しんりき)強(つよ)きよりして諸友(もろとも)白山翁(はくさんをう)に