翻刻
【右丁】
げましたわむれにも遊芸(ゆうげい)などいたさせず只(たゞ)朝夕(てうせき)
我(わ)が非(ひ)を知(し)り他(た)の是(ぜ)を見(み)せ実(じつ)不 実(じつ)のさかひを能(よ)く
正(たゞ)す是(これ)親(をや)の慈悲(じひ)にて大愛(たいあい)と云(い)ふべし親(をや)の恩(をん)主(しう)
恩(をん)を忘(わす)るゝも実意(じつい)なき故(ゆへ)也 実意(じつい)なくして道心(どうしん)起(おこ)
るものあるべからず道義(どうぎ)は是(これ)信(しん)也 亦(また)我(われ)に実意(じつい)あるも
のは人の実意(じつい)を受用(じゆよう)し他(た)の実事(じつじ)を心用(しんよう)するは我(われ)
に実意(じつい)あるものにて道志(どうし)の者(もの)成(な)れば亦(また)信友(しんゆう)多(をう)し
其本(そのもと)皆(みな)幼少(ようせう)の養育(やういく)にあり才(さい)不才 有智(うち)無智(むち)に
依(よ)らず
一 女子(によし)は別(べつ)して育(そだて)かた心得(こゝろへ)べし愛(あい)におぼれ心(こゝろ)の儘(まゝ)に
【左丁】
育(そだつ)る時(とき)は前段(ぜんだん)の通(とう)り多分(たぶん)気随(きずい)に成(な)り十(じう)余才(よさい)より
( 二 三)
色取(いろどり)見(み)へ名聞(めうもん)を好(この)み過半(くわはん)陽気(うわき)になり勝(がち)也 皆(みな)眼(がん)
前(ぜん)の愛(あい)におぼれ幼稚(ようち)より形姿(なりふり)当世(とうせい)を好(この)み目立(はでの)風(ふう)
俗(ぞく)をさせ所々(しよ〳〵)物見(ものみ)或(ある)ひはたはむれ場所(ばしよ)へ連(つ)れゆき
猥(みだ)りなるたはことを見聞(みきか)せ遊芸(ゆうげい)など習(なら)はせ 陽(うわ)
気(き)の事(こと)のみ見覚(みおぼへ)させ全(まつた)く愛(あい)にあらざるにはあら
ねども親(をや)の楽(たのし)みにいたす場(こゝろ)多しいづれ当人(とうにん)は何(なに)
の念(ねん)なく陽気(うわき)に成(な)るとも我儘(わがまゝ)に成(な)るとも何(なに)とも
しらずおもはざればいさゝか罪科(つみとが)なく。貴賤(きせん)とも
妻女(さいじよ)は猥(みだり)なる劇場(げきじやう)などへは行(や)るべからずゆくべからず
( つまむむすめ) ( たわ むれば)