翻刻
【右丁】
の家々(いへ〳〵)には下臣(かしん)の内(うち)志(こゝろざし)ある士(し)をゑらみ附人(つけびと)とし或は
友(とも)をゑらみ土地(とち)をゑらまれしとこそ 幼稚(ようち)より
善悪(ぜんあく)邪正(じやせう)慈悲(じひ)無慈悲(むじひ)実(じつ)不 実(じつ)を正(たゞ)し善事(ぜんじ)
実事(じつじ)慈悲心(じひしん)成(な)る時(とき)は賞(せう)し悪事(あくじ)不 実(じつ)無慈悲(むじひ)な
る時(とき)は急度(きつと)糾明(きうめい)し起臥(きぐわ)に邪正(じやせう)を正(たゞ)し養育(よういく)い
たすこそ真(しん)の慈愛(じあい)にて是(これ)又(また)親(をや)の慈悲(じひ)なり幼(よう)
稚(ち)無欲(むよく)なれば善悪(ぜんあく)のわきまへ無(な)く我(わ)が気質(きしつ)
の生(うぶ)の儘(まゝ)の所作(しよさ)なるに皆(みな)眼前(がんぜん)の愛(あい)に溺(をぼ)れ其(その)
好(この)む所(ところ)にまかすよりして我(われ)知(し)らず 気随(きずい)我儘(わがまゝ)に
成(な)り成長後(せいてうご)不 義(ぎ)不妙法(ふによほう)ものとなりて 不 孝の(こう)汚(を)
【左丁】
名(めい)を受(う)くるも全(まつた)く親(をや)の不 実(じつ)にて只(たゞ)眼前(かんぜん)の愛(あい)に
ほだされ悪業(あくがう)邪行(じゃげう)も免(ゆる)し理非(りひ)をも分(わか)たず全(まつた)
( わざ よこしま)
く皆(みな)親(をや)祖父(ぢゞ)祖母(ばゞ)の愛(あい)は愛(あい)にはなくて銘々(めい〳〵)楽(たのし)みにお
ぼれ成長(せいてう)行末(ゆくすへ)を思(おも)わざる也 是(これ)を愛(あい)とやいはむ成(せい)
長(てう)し不 孝(こう)たりとも当人(とうにん)罪(つみ)重(おも)からず養育(よういく)不 実(じつ)
の作(な)す所(ところ)なり亦(また)今時(いまどき)は出産(しゆつさん)して母(はゝ)の乳(ち)ありながら
乳母(うば)を以(もつ)て養育(よういく)せる事(こと)親(をや)の不 実(じつ)にて愛(あい)も知(し)らざ
るなり高位(かうい)高禄(かうろく)大身(たいしん)たりとも母(はゝ)の乳(ち)は出生(しゆつせう)に与(あた)
へし所(ところ)の天扶持(てんふち)なれば無上(むじやう)の良薬(りやうやく)なり然(しか)るに与(あた)
ふ所(ところ)の扶持(ふちを)あたへざるは何(なん)が故(ゆへ)成(なる)ぞ親(をや)自己(じこ)の身愛(しんあい)名(めう)