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【右丁】
沙汰(さた)し理非(りひ)を正(たゞ)し心(こゝろ)を尊(たうと)く身(み)を卑(ひき)く養育(よういく)すべし
一 庭上(ていせう)の樹木(じゆぼく)我(わ)が儘(まゝ)に枝葉(ゑだは)しげり鬱々(うつ〳〵)敷(しく)なれば木(こ)
の間(ま)すかさんとて植木職(うへきや)来(きた)りて延(の)び〳〵としたる
よき枝振(ゑだぶ)りの惜(おし)きと思(おも)ふを伐(き)りよく栄(さか)へ美(うるは)し
く見(み)へけるをも摘(つ)み込(こ)み若木(わかき)は右(みぎ)へ延(の)ぶ枝(ゑだ)を左(ひだり)へ
たわめ前(まへ)へ出(いで)たるを後(うしろ)へ縛(しば)り惜(をし)げもなく伐込(きりこ)み
摘込(つみこむ)ゆへ翌年(よくねん)よきほどに栄(さか)へ生(を)ひたち 若木(わかき)枝(ゑだ)
ぶりも能(よく)成(な)るなり其儘(そのまゝ)に捨置(すておか)ば己(をの)がまゝに栄(さか)へ
しげり風(かぜ)も通(とう)さねば下葉(したば)より枯(か)れ或(あるひ)は虫(むし)付(つ)き
病樹(びやうじゆ)と成(な)るなり 皆(みな)兼(かね)ての養育(よういく)に有(あ)り《割書:老拙》 薄(はく)
( やまひぎ)
【左丁】
氷(ひやう)を踏(ふ)み深(ふか)き淵(ふち)に臨(のぞ)み年来(ねんらい)危(あやう)き幻夢(げんむ)に犯(をか)さるれ
( ゆめまぼろし)
ば斯(かく)繰言(くりこと)演(のぶ)る事(こと)容易(ようい)に心得(こゝろへ)見(み)るべからず皆(みな)人(ひと)此(この)身(み)
の大事(だいじ)に心(こゝろ)を入(いれ)させ真楽(しんらく)を得(へ)させむ為(ため)のみ真楽(しんらく)は不
老(らう)の良薬(りやうやく)取(とつ)て服用(ふくよう)せむもの十人は十人こと〴〵く寿(じゆ)
( ことぶき)
を保(たも)たずと云(い)ふ事(こと)無(な)し疑(うたがひ)を生(せう)ずる事 勿(なか)れ
張(はり)とづる氷(こうり)も水(にず)と知(し)り得(う)れば誰(た)が手(て)もからず
とくるなりけり。
◦斉木(さいき)何某(なにがし)に答(こたふ)
一 何某(なにがし)問(と)ひけるは人として道(みち)を知らざるは人外(にんぐわい)と古人(こじん)も宣(のたま)
ひ候へば何(なに)とぞ得道(とくどう)いたし度(たく)候 得(へ)ども一向(いつこう)不 学(がく)文盲(もんもう)の