翻刻
【右丁】
目(もく)と間断(かんだん)なく心源(しんげん)に向(むか)ふべし多病(たびやう)の由(よし)是(これ)全(まつた)く病根(ひやうこん)
知(し)らざる故(ゆへ)也 元(もと)是(これ)皆(みな)人 無病(むびやう)のもの一度(ひとたび)相見(そうけん)せば従来(じうらい)
の諸病(しよびやう)一時(いちじ)に消滅(せうめつ)して安体(あんたい)なるべく万病(まんびやう)の一薬(いちやく)是(これ)
なり
深山(みやま)なる岩間(いわま)がくれの苔清水(こけしみず)有(あり)とばかりは
すむかひもなし
◦森何某(もりなにがし)に与(あた)ふ 【鉤かっこ有り】
一 一切(いつさい)経伝(けいでん)胸中(けうちう)に貯(たくわ)へ広(ひろ)く講(こう)ずといふとも一度(ひとたび)貫(くわん)
( つらぬき)
通(つう)せざるは小人(せうじん)の俗儒(ぞくじゆ)にて論(ろん)ずるに足(た)らず故(ゆへ)に
( とうる)
君子(くんし)の儒(じゆ)と為(な)れ小人の儒(じゆ)と為事(なること)なかれと君子(くんし)の
【左丁】
儒(じゆ)とは《振り仮名:為_レ己の学者|おのれのためにまなぶもの》にて己身(をのれ)を脩(をさ)め人を治(をさ)むる実学(じつがく)。
小人の儒(じゆ)とは《振り仮名:為_レ 人学者|ひとのためにまなぶもの》にて古事来歴(こじらいれき)を知(し)り詩作(しさく)文(ぶん)
章(せう)を好(この)み博識(はくしき)多才(たさい)也と云(い)へども脩身(しうしん)斉家(せいか)の志(こゝろざし)な
く世人(せじん)の為(ため)ならざれば俗儒(ぞくじゆ)の記誦(きしやう)詞章(ししやう)。用(もち)ゆるに足(た)
らずと《振り仮名:為_レ己学者|をのれのためのがくしや》は《振り仮名:知_二 天下_一|てんかしる》。《振り仮名:為_レ 人学者|ひとのためのがくしや》は自己(じこ)を知(し)ら
ず 譬(たと)へ十三 経(けう)をさとし五常(ごじやう)五倫(ごりん)の道(みち)を行(をこな)ひ或(あるひ)
は五戒(ごかい)十戒(じつかい)乃至(ないし)数百戒(すひやくかい)を保(たもち)一代蔵経(いちだいぞうけう)に亘(わた)り孔(かう)
老(らう)の行跡(げうせき)を写(うつ)し仏祖(ぶつそ)の徳(とく)に似(に)たりと云(い)ふとも私(し)
知(ち)学知(がくち)を除(のぞ)かざれば皆(みな)我相(がそう)人欲(じんよく)の私(わたくし)の法(ほう)なり只(たゞ)
我(われ)なく心(こゝろ)無(な)く《振り仮名:無_レ聲無_レ臭|おともなくかもなき》の自然智(しぜんち)に至(いた)らずし