翻刻
【右丁】
克己(こくき)の伝受(でんじゆ)を得(へ)て当年(とうねん)六十四 歳(さい)に相 成(なり)候得どもよ
うぜうの御蔭(をんかげ)ゆへか壮年(そうねん)の時(とき)より身体(しんたい)健(すこや)かにして
暑寒(しよかん)の憂(うれい)もなく安心(あんしん)仕(つかまつり)候尤もそれがし病気(びやうき)未(いまだ)平生(へいぜい)
ならず候 節(せつ)信友(しんゆう)より借受(かりうけ)白隠(はくいん)夜船閑話(やせんかんわ)。貝原(かいばら)養生(ようぜう)
訓(くん)。沢水(たくすい)法語(ほうご)。月庵(げつあん)法語(ほうご)。亦(また)徒然草(つれ〴〵くさ)。和論語(わろんご)。般若(はんにや)
心経(しんげう)。小室六門(せうしつろくもん)。亦(また)大学中庸和解(だいがくちうようわかい)など拝見(はいけん)し日々(にち〳〵)
朝夕(てうせき)養生(ようぜう)仕候 各々様(をの〳〵さま)にも右(みぎ)の本(ほん)など御覧(ごらん)なされ長(てう)
寿(じゆ)御工風(ごくふう)可被成候 尤(もつとも)右本(みぎほん)御覧(ごらん)被成候 節(せつ)は御 心(こゝろ)を臍(ほその)
下(した)に静(しづめ)られくり返(かへ)し御覧(ごらん)被成度(なされたく)則(すなはち)夜船閑話(やせんかんわ)に
人々(ひと〳〵)いまだねむりにつかざる前(さき)に両足(りやうあし)をのべ強(つよく)踏(ふ)み
【左丁】
揃(そろ)へ一身(いつしん)の元気(げんき)をして臍輪(さいりん)。気海(きかい)。丹田(たんでん)。腰脚(ようきやく)。足心(そくしん)。の
間(あいだ)に充(み)たしめ此観(このくわん)をなすべし是(これ)養生(ようぜう)の専一(せんいち)也(なり)と
御合点(ごがてん)なされがたき所(ところ)御座(ござ)候はゞ其所(そのところ)よく〳〵御工夫(ごくふう)
成(な)され度(たく)候 扨(さて)身(み)養生(ようぜう)第一(だいいち)は千万人(せんまんにん)好(この)む処(ところ)の色欲(しきよく)
なり是(これ)第一番(だいいちばん)の御慎(をんつゝし)み無之(これなく)候ては迚(とて)も長命(てうじゆ)は相成(あいなり)
申 間敷(まじく)候 末々(すへ〴〵)高貴(かうき)の秘伝書(ひでんしよ)にて御工夫(ごくふう)可被成(なさるべく)候 御銘(ごめい)
々( 〱)御身(をんみ)の一 大事(だいじ)の事(こと)に候 何分(なにぶん)御工風(ごくふう)出来(でき)御長寿(ごてうじゆ)被(あそ)
遊(ばされ)候はゞ大慶(たいけい)仕候 老若男女(らうにやくなんによ)の隔(へだて)なく只(たゞ)々 御命(をんいのち)大事(だいじ)
と御慎(をんつしみ)次第(しだい)にて父母(ふぼ)より請(うけ)たる天然(てんねん)の御寿命(ごじゆめう)御(をん)た
もち被遊(あそばされ)候 義(ぎ)は至(いたつ)て安(やす)き御事(をんこと)に候 左(さ)候はゞ愚老(ぐらう)なきあ