翻刻
【右丁】
心楽(しんらく)は真楽(しんらく)にて《振り仮名:不_レ可_レ尽|つくべからす》 是(これ)真(しんの)養生(よふぜう)
( まことのたのしみ)
身楽(しんらく)は仮楽(けらく)にて夢幻(むげん)の如(ごと)し是(これ)不 養生(よふぜう)
( みのたのしみ) ( かりのたのしみ) ( ゆめまぼろし) ( ごと)
此(この)身心(しん〳〵)苦楽(くらく)のさかひを知得(ちとく)し心身(しんじん)不二 無苦(むく)楽地(らくち)
に至(いた)るを真楽(しんらく)と云(い)ふ是(これ)生(せい)を養(やしな)ふ無上(むじやう)の良方(りやうほう)也
或人云 自性(じせう)独朗(どくらう)也 生死(せうじ)善悪(ぜんあく)一 切(さい)事(じ)心の所現(しよげん)我(わ)が歓楽(くはんらく)困(こん)
( こころ) ( ほがらか) ( あらわすところ) ( たのし) ( くる)
苦(く)元(もと)一 道(だう)皆(みな)愚迷(ぐめい)の所為(しよゐ)也 是(これ)を信服(しんふく)得心(とくしん)せば百日にして
(し) ( まよい) ( なすところ) ( まことにのみ) (こゝろうる)
病根(びやうこん)絶(た)へ寿(じゅ)を得(へ)む事(こと)不可疑(うたがふべからず)古今(ここん)天下一薬(てんかのいちやく)是(これ)也
(やまひね) ( ことぶき)
抱_レ 一 ̄ヲ以_レ神 ̄ヲ為_レ車 ̄ト以_レ気 ̄ヲ為_レ馬 ̄ト
古徳(ことく)云 神-気 相-合 ̄シ 可 ̄シ_二以 ̄テ長-生 ̄ス_一
〇老(をひ)の身(み)のまた若(わか)がへる微妙劑(みめうざい)不 思義(しぎ)と計(ばかり)り
【左丁】
きゝし御(み)くすり。
〇禅師法話(ぜんしほうわ)
一 人々(にん〳〵)成仏(じやうぶつ)とは古今(ここん)無(な)く即今(そくこん)眼前(がんぜん)にあつて有(あり)のまゝ成(な)る
ものを其(その)まゝに安心(あんじん)する義(ぎ)にて別(べつ)に他方(たほう)に向(む)き境界(きやうがい)
( さかい)
をかへて外(ほか)に光(ひか)りを求(もと)むるに非(あら)ず各々(をの〳〵)祖仏(そぶつ)古徳(ことく)に
かわらぬもの具足(ぐそく)すれども其(その)本旨(ほんし)をしらざる故(ゆへ)に凡(ぼん)
愚(ぐ)迷倒(めいだう)の衆生(しゆぜう)と成(な)る也 然(しか)れども迷悟(めいご)各別(かくべつ)のこゝろ
無(な)きがゆへに諸仏(しよぶつ)も説(と)きたまはず大河(たいが)の水(みず)小河(せうが)の
水 入(い)れ物(もの)は別(べつ)也と云(い)へども水の性(せう)は同(おなじ)きが如(ごと)し祖仏(そぶつ)の
一 念(ねん)不 生(せう)の心(こゝろ)と人々(ひと〳〵)思慮(しりよ)分別(ふんべつ)の妄想(もふぞう)の心(こゝろ)と微塵(みぢん)