翻刻
【右丁】
一 此(この)一大 事(じ)天地(てんち)に先立(さきだち)古(いにし)へに過(す)ぎ今(いま)に越(こ)へ凡聖(ぼんせう)の中(うち)の境界(きやうがい)
にあらず思慮分別(しりよふんべつ)も及(およ)ばず是(これ)を名付(なづけ)て不 思義(しぎ)の法(ほう)
といふ此(この)法(ほう)即今(そくこん)人々(ひと〳〵)に具足(ぐそく)すれども自(みづ)から悟(さと)らざるに依(よつ)
( そなわる)
て日々(ひゞ)に用(もち)ひて知(し)らず盲人(もふじん)の終日(しうじつ)大道(たいどう)を行(ゆき)て自(みづ)から
見(み)ざるが如(ごと)し自(みづ)から見(み)ず知(し)らざる故(ゆへ)に是(これ)を信ぜず
貴(たつと)びず只(たゞ)眼前(がんぜん)の身命(しんめい)を助(たす)からむとおもふ計(ばかり)にて
種々(しゆ〴〵)の無尽(むじん)の業(ごう)をなして日夜(にちや)に悪行(あくごう)増長(ぞふてう)すた
( つきしなき)
とひ百年の齢(よわひ)を保(たも)ち七-珎(ちん)万宝(まんほう)こゝろの儘 自在(じざい)也と
も只(たゞ)是([こ]れ)【こ欠落】暫時(ざんじ)夢中(むちう)の幻楽(げんらく)也 故(ゆへ)に経(けう)に曰(いわく)諸行無常(しよげうむじやう)是(ぜ)
生滅法(せうめつほう)と《振り仮名:可_レ信|しんずべし》
【左丁】
一 自心(じしん)心体(しんたい)元(もと)より十 方(ほう)に遍(あまね)くしていたらざる所(ところ)無(な)く世(せ)
界(かい)一 心(しん)にして居住(きよぢう)せざる所(ところ)なく万法(ばんほう)として具足(ぐそく)せざる所(ところ)
も無(な)し虚空同体(こくうどうたい)也 心(こゝろ)とは内(うち)に非(あら)ず外(ほか)にあらず中間(ちうかん)にあ
らず唯(たゞ)是(これ)自性(じせう)の心体(しんたい)は凡夫(ぼんぶ)にあらず仏(ほとけ)に非(あら)ず名(な)も
無(な)く字(じ)も無(な)く姿(すがた)もなし念々(ねん〳〵)は波浪(はろう)の如(ごと)く動(うご)き
( なみ)
起滅(きめつ)すれども自性(じせう)の心体(しんたい)は大海(だいかひ)の如(ごと)く増(ま)さず減(へら)
ず動(うご)かず念相(ねんそう)は生死(せうし)去来(きよらい)すれども法性(ほうせう)本分(ほんぶん)の真(しん)
体(たい)は常住(じやうぢう)にして自(をのづ)から湛然(たんぜん)たり
〇静座和讃(せいざわさん)
書経(しよきやう)は直指(じきし)の道器(だうき)にて 今(いま)も昔(むかし)の真々(まゝ)ながら