翻刻
【右丁】
所禅師(ところぜんし)の示教(しけう)を受(うけ)候ては少(すこ)しも恥(はぢ)ならぬ義(ぎ)を恥(はぢ)と存(ぞん)
( しめし)
じ面皮(めんひ)にもかゝるほどの恥(は)づる事(こと)をば恥(はぢ)とも《振り仮名:不_レ存|ぞんぜす》居(をり)候
事(こと)こそ後悔(かうくわい)いたす也 文盲(もんもう)不 才(さい)成(なる)も強(しひ)て恥辱(ちじよく)にも
非(あら)ずまた広学(くはうがく)多才(たさい)有(あ)りとも具足(ぐそく)の良知(りやうち)を不(ゑ)
得(ず)して何(なん)の益(ゑき)かある諸学(しよがく)諸道(しよどう)只(たゞ)是(これ)を得(う)るのみされ
ば古今(ここん)上下(じやうげ)貴賤(きせん)をいはず是(これ)を得(う)るを道人(どうじん)と云(い)ひ
是(これ)を得(ゑ)ざるを人外(にんぐわい)と云(い)ふ我(われ)不 学(がく)なれば外(ほか)儒仏(じゆぶつ)の
書(しよ)も見(み)ず只(たゞ)此(この)禅師(ぜんし)教諭(けうゆ)法語(ほうご)尊信(そんしん)するのみ。人
多(おう)き人の中(なか)にも人ぞなき人に成(な)せ人 人になれ人。と
の神詠(しんゑい)もあれば人々(ひと〴〵)此(この)五尺(ごしやく)の体(たい) 起臥(きぐわ) 見聞(けんもん) 覚知(かくち)
( からだ)
【左丁】
の自由(じゆう)は何(なに)ものゝ所為(しよい)歟(か)神(しん)儒(じゆ)仏(ぶつ)武道(ぶどう)心懸(こゝろがく)るもの
此(この)一 事(じ)を発明(はつめい)せずんば たとへ博識(はくしき)達学(たつがく)と云(い)ふと
も其道(そのみち)の似(に)せもの成(なる)べし武士道(ぶしどう)に信心(しん〴〵)堅固(けんご)之(の)
武士(ぶし)犬死(いぬじに)無(な)しとの語(ご)あり此意(このい)を得(へ)ずして信心(しん〴〵)
堅固(けんご)なるものあるべからず さ あらば皆(みな)犬死(いぬじに)なら
ずや 三略(さんりやく)南木(なんぼく)武経(ぶけう)披見(ひけん)すべし士農工商(しのうこうしやう)の人々(ひと〳〵)
知足(ちそく)の望(のぞ)みあらば即今(そくこん)小事(せうじ)を去(さつ)て大事(だいじ)を取(と)り
( たることをしる)
己(おの)れを忘(わす)れて物(もの)を乞(こ)ふべし物(もの)はものゝ司(つかさ)にて古(こ)
今(こん)天下(てんか)の大宝(たいほう)己(おの)れに具(ぐ)す古人(こじん)云く 《振り仮名:有_レ物先_二 天地_一無|ものありてんちにさきだつかたち》
( たから) ( そなはる)
《振り仮名:_レ形|なし》元(もと)寂寥(せきりやう)と是(これ)古今(ここん)凡聖(ぼんせう)無(な)く男女(なんによ)無(な)く同体(どうたい)
( しづか)
(なんによ)