翻刻
【右丁】
主(しゆ)と誠(まこと)に心(こゝろ)は万徳(ばんとく)万法(ばんほう)の根源(こんげん)也 神(しん)聖(せい)仏(ぶつ)の明言(めいごん)
( あるじ)
明語(めいご)ありとも心用(しんよう)せざれば寸功(すんこう)なく命(めい)もまた無(な)し
信用(しんよう)し心行(しんげう)する時(とき)は即効(そくこう)あり功徳(くどく)ありて命(めい)も又(また)
( をこない)
寿(じゆ)を保(たも)つ皆(みな)信(しん)不 信(しん)の知(し)る所(ところ)信(しん)不 信(しん)は一心(いつしん)の知(し)ると
ころにて生(せう)もこころ。死(し)も心。生死(せうし)の外(ほか)に遊行(ゆうげう)するも
また是(これ)心(こゝろ)。これ心(こゝろ)は万徳(ばんとく)の主(しゆ)ならずや信力(しんりき)堅固(けんご)
に精進(しやうじん)し我(われ)を殺(ころ)し六親眷属(ろくしんけんぞく)および万物(ばんぶつ)
ともに悉(こと〴〵)く殺し(ころ)了(おわつ)て是(これ)を見(み)よ。「瓜売(うりうり)がかた
荷(に)のうりを売(うり)きつて残(のこ)る片荷(かたに)はなすびばか
りぞ。是(これ)教外(けうげ)以心伝心(いしんでんしん)也また是(これ)を見(み)るべし。
【左丁】
燈火(ともしび)の消(き)へて行衛(ゆくへ)も無(な)かりけりくらきか
元(もと)のすみ家(か)にもなく
吾(われ)幼年(よふねん)より弓馬(きうば)を初(はじ)め武術(ぶじゆつ)に心を悉年(ゆだね)極意(ごくい)に至(いた)り
無体(むたい)之 体(たい)無用之用(むよふのよふ)成事(なること)を了知(りやうち)し自在(じざい)を得(へ)たり
哥に《割書:おのつから移れは移る 移すとも月も思はず水も思はし|草のはに結はぬさきの白露は何をたよりに置はしめけむ》
是(これ)武道(ぶだう)に限(かぎ)らず諸(しよ)芸道(けいだう)三 教(けう)四 教(けう)も此(この)哥(うた)に明白(あきらか)也又。諸道(もろみち)も一(ひと)つに帰(き)す
る時(とき)や来(き)てあかぬ詠(ながめ)の白雲(はくうん)万里(ばんり)。と口(くち)すさみて只(たゞ)非情(ひじやう)の草(そう)
木 風月(ふうげつ)山水を楽(たのし)みとして貧(ひん)を厭(いとは)ず福(ふく)を親(したし)まず貴(き)
賤(せん)と云(い)へど尊敬(そんけう)せず下(さげ)しまず他(た)に施(ほどこ)すと云(い)へども受(うく)る
事(こと)を思(おも)はず天地(てんち)同根(どうこん)の地(ち)に住(ぢう)し口(くち)を明(あ)かず山海(さんかい)の珍味(ちんみ)を
( たまのあじ)