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コレクション: 蔦唐丸(蔦重)

見立蓬莱 : 2巻 - 翻刻

見立蓬莱 : 2巻 - ページ 4

ページ: 4

翻刻

よし原に松はや 千蔵とて名高きゆう 女やありその 内に 梅かえと きこえ しは ならぶ かたなき全盛の君 なりしが其ころ せんしうと いふきやくふかく のぼりつめて通ひ ければ梅かえも にくからず なれ〳〵て 行末の事をも 云かはすえにし とそなりける 此梅かえがかふろに竹のときこ へしはかの万右衛門がむすめなるが 心たて正直にしてしほらしき 生れつきなれば梅かえもふびんに 思ひめをかけてつかいけり 扨千しうはばんしう高砂の うらへきうに用の事ありて たびだつゆへ しばらくは あふ事はならずと けふいとまこひに 来る 【せんしう】 〽てまへたちに  云てきかせて  もなんのやく  にたゝ  ぬ用さ 【禿・竹の】 せんしうさんの用は わたしが名と同し ことて竹のしれた       ことさ 【梅がえ】 〽高砂のうら とは とんな所で ありんせうねへ 【せんしう】 〽高さごのうらは わかなごのつらの   やうな所さ 【梅がえ】 〽ばからしいよ 【せんしう】 〽よくしつて いるの なるほど    ばかさごの うらとも云よ 【梅がえ】 〽なんの用 でおいで なんす かんがけ     かへ どうぞせつく まへに帰つて お くん なんし そうでないと いつそ 【遣り手?】 〽おいとまごひなら   せめどうくを出さ     ずはなるまい 【太鼓持ち?】 梅がへさまいつそどう  いたしました 【梅がえ】 〽大きにおせわ

現代語訳

吉原に松葉屋千蔵という名高い遊女屋があり、その店に梅がえと呼ばれる、並ぶ者のない全盛の花魁がいた。その頃、千州という客が深く入れ込んで通い詰めていたので、梅がえも憎からず思い、馴れ馴れしくなって将来のことまで語り合う仲となった。 この梅がえの禿に竹のと聞こえる者がいたが、これはかの万右衛門の娘で、心立てが正直で慎ましい生まれつきであったので、梅がえも不憫に思い目をかけて使っていた。 さて千州は播州高砂の浦へ急用があって旅立つため、しばらくは会うことができないと、今日暇乞いに来る。 【千州】 あなた方に言って聞かせても何の役にも立たない用事です。 【禿・竹の】 千州さんの用事は私の名前と同じことで、竹のことをよく知っていることです。 【梅がえ】 高砂の浦とはどんな所でございましょうね。 【千州】 高砂の浦は若い女の顔のような所ですよ。 【梅がえ】 ばからしい。 【千州】 よく知っているんですね。なるほど「ばか砂の浦」とも言いますよ。 【梅がえ】 何の用事でいらっしゃるのですか。心配ですから、どうぞ急いで帰ってきてください。そうでないと、いっそ... 【遣り手】 お暇乞いなら、せめて道具代を出さなければなりません。 【太鼓持ち】 梅がえ様、いっそどういたしましょう。 【梅がえ】 大変お世話になります。

英語訳

In the Yoshiwara, there was a famous brothel called Matsuba-ya Senzo, and in that establishment was a courtesan called Umegae, a woman of unparalleled prosperity and fame. At that time, a client named Senshu was deeply infatuated and visited her constantly, so Umegae did not dislike him either. They became intimate and even discussed their future together. This Umegae had a kamuro (child attendant) known as Take-no, who was the daughter of the aforementioned Man'emon. Because she had an honest heart and a modest nature, Umegae took pity on her and looked after her with special care. Now Senshu had urgent business in Takasago Bay in Banshu Province and had to travel there, so he would not be able to see her for some time. Today he comes to bid farewell. [Senshu] Even if I told you about it, it would be of no use to you. [Kamuro Take-no] Senshu-san's business is the same as my name - it's something about bamboo (take) that I know well. [Umegae] What kind of place is Takasago Bay? [Senshu] Takasago Bay is like a young woman's face. [Umegae] How foolish. [Senshu] You know it well. Indeed, it could also be called "Fool's Bay" (bakasago). [Umegae] What business takes you there? I'm worried, so please hurry back. Otherwise, I might just... [Brothel manager] If this is a farewell visit, you should at least pay the fee. [Male entertainer] Umegae-sama, what shall we do then? [Umegae] Thank you very much for your consideration.