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コレクション: 恋川春町

三舛増鱗組 : 3巻 - 翻刻

三舛増鱗組 : 3巻 - ページ 15

ページ: 15

翻刻

くさぞうしの方は初どの軍 大にてをうしなひむねんこつづい にてつしこのたびは楠こうの はかりことを以て大がまへねつ とうをたゝへ水はぢき飛竜 水又は長ゑのひしやくなど にてにえゆを あびせければ もぐさのせい 大きにへきゑき しす□□□ぶん にて百丁にげあしの はやきやつは 千てう ばかりも にげのび たり されば此のち もぐさの   こうのう かくべつに覚しは 此にへゆにて     きう   されしゆへの事  なりとて今の世         を ゆざらしもぐさと  いひ其きゝ     かくべつ也 是より又あんじ つけて温泉     にて さらしければ つねのにへゆと ちがひてばつくんの こうある事也 ふでとかみとのなか         よい 物で見しらせた へんほうに あついものへ あついもので もつて   参らふ きう   とも  いはせぬ     ぞ かゝる下に#1いけす稲荷 はくうんにうちのり あらはれ給ひわだんを とゝのへ給ふ 此たびのたゝかひみな 孫兵衛平右衛門両人が ぞくじやうのまよひ より出たりまさご ひめが病気平ゆは 文武の 二道 車の 両わのごとくにて 一ほう かけても 治しがたし さればそのこうの ゆうれつあるへから         す 又いくさも 両度のせうぶ 五分  〳〵  に わかれたれば いづれをいづれと 云がたし 此のちはしん      てい をう ち あ か し きやく   い  なく ま  じ  わるべ    し 【もぐさと書物の武将たち】 あらありがたや いづれもいなりの 御たくせんなるぞ 軍をまとめ 引とれ〳〵

現代語訳

草紙の方は初回の軍で大いに負けを喫し、無念骨髄に徹して、今度は楠木正成の謀略を用いて大構えの熱湯を湛え、水弾き、飛竜水、または長柄の柄杓などで煮え湯を浴びせかけた。そのため艾の精霊は大いに辟易し、数分のうちに百丁逃げ足の早い奴は千丁ばかりも逃げ延びた。 それゆえ、この後艾の効能が格別に優れているのは、この煮え湯で灸をされたためのことだとして、今の世では湯晒し艾と言い、その効き目は格別である。これより更に工夫して温泉で晒したので、普通の煮え湯とは違って抜群の効果があることである。 筆と紙との仲の良い物で見知らせた。変法に、熱い物へ熱い物をもって参ろう。灸とも言わせぬぞ。 かかる折に池洲稲荷が白雲に打ち乗り現れ給い、和談を整え給う。 「この度の戦いはみな孫兵衛・平右衛門両人の俗情の迷いより出たものである。真砂姫の病気平癒は文武の二道、車の両輪のごとくにて、一方が欠けても治し難い。されば、その効の優劣があるべからず。また戦も両度の勝負、五分五分に分かれたので、いずれを優れているとも言い難い。この後は真の情を打ち明かし、客意なく交わるべし。」 【艾と書物の武将たち】 「ああありがたや、いずれも稲荷の御託宣である。軍を収めて引き取れ。」