翻刻
くさぞうしの方は初どの軍
大にてをうしなひむねんこつづい
にてつしこのたびは楠こうの
はかりことを以て大がまへねつ
とうをたゝへ水はぢき飛竜
水又は長ゑのひしやくなど
にてにえゆを
あびせければ
もぐさのせい
大きにへきゑき
しす□□□ぶん
にて百丁にげあしの
はやきやつは
千てう
ばかりも
にげのび
たり
されば此のち
もぐさの
こうのう
かくべつに覚しは
此にへゆにて
きう
されしゆへの事
なりとて今の世
を
ゆざらしもぐさと
いひ其きゝ
かくべつ也
是より又あんじ
つけて温泉
にて
さらしければ
つねのにへゆと
ちがひてばつくんの
こうある事也
ふでとかみとのなか
よい
物で見しらせた
へんほうに
あついものへ
あついもので
もつて
参らふ
きう
とも
いはせぬ
ぞ
かゝる下に#1いけす稲荷
はくうんにうちのり
あらはれ給ひわだんを
とゝのへ給ふ
此たびのたゝかひみな
孫兵衛平右衛門両人が
ぞくじやうのまよひ
より出たりまさご
ひめが病気平ゆは
文武の
二道
車の
両わのごとくにて
一ほう
かけても
治しがたし
さればそのこうの
ゆうれつあるへから
す
又いくさも
両度のせうぶ
五分
〳〵
に
わかれたれば
いづれをいづれと
云がたし
此のちはしん
てい
をう
ち
あ
か
し
きやく
い
なく
ま
じ
わるべ
し
【もぐさと書物の武将たち】
あらありがたや
いづれもいなりの
御たくせんなるぞ
軍をまとめ
引とれ〳〵
現代語訳
草紙の方は初回の軍で大いに負けを喫し、無念骨髄に徹して、今度は楠木正成の謀略を用いて大構えの熱湯を湛え、水弾き、飛竜水、または長柄の柄杓などで煮え湯を浴びせかけた。そのため艾の精霊は大いに辟易し、数分のうちに百丁逃げ足の早い奴は千丁ばかりも逃げ延びた。
それゆえ、この後艾の効能が格別に優れているのは、この煮え湯で灸をされたためのことだとして、今の世では湯晒し艾と言い、その効き目は格別である。これより更に工夫して温泉で晒したので、普通の煮え湯とは違って抜群の効果があることである。
筆と紙との仲の良い物で見知らせた。変法に、熱い物へ熱い物をもって参ろう。灸とも言わせぬぞ。
かかる折に池洲稲荷が白雲に打ち乗り現れ給い、和談を整え給う。
「この度の戦いはみな孫兵衛・平右衛門両人の俗情の迷いより出たものである。真砂姫の病気平癒は文武の二道、車の両輪のごとくにて、一方が欠けても治し難い。されば、その効の優劣があるべからず。また戦も両度の勝負、五分五分に分かれたので、いずれを優れているとも言い難い。この後は真の情を打ち明かし、客意なく交わるべし。」
【艾と書物の武将たち】
「ああありがたや、いずれも稲荷の御託宣である。軍を収めて引き取れ。」