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コレクション: 恋川春町

三舛増鱗組 : 3巻 - 翻刻

三舛増鱗組 : 3巻 - ページ 4

ページ: 4

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【道意の店】回陽堂 かくて道意はより 朝をともなひいづ の国につきしかば いけすいなりのかた はらにすみてもと よりなれしもぐ させうはいをし けるにそのころ東 国に切 もぐさ といふ物 なかりければ てうほうなる物 なりとてことの 外はやり大小 めうよりおびたゝし く御用仰付られ あきないはん じやうしける かはらけ二つ を合せつゝ 百てう入りを ぞこしらへ     ける  これきり   もぐさ     の  はじめ     と    かや より とも公 その比は 若しゆさか りにてうつ くしければ しよ人たちとま りて故人盛府に そのまゝなりといひ ふらしけるより道意 おもひつきにてもぐさの     はんこうを市松       ぞめにぞ         したり           ける ずいぶん御せい出されませ 外へてまによりをおすよりも 内でいたせば大ぶんわりが        よふこさります  それがすむと小児を仕入ねば          なりませぬ 【孫兵衛の店】山内屋 そのころもぐさやがをちつきしとなりに 山内や孫兵へといふもの有これもゆへある ものなりしがたび〳〵の兵らんにをち ぶれ伊豆の国へ引こみいけるがもと より才智あるものなりければ いにしえ今の 事をかきつゞり 双紙となし又は むかしの名将 ゆうしのすがた を紙にすりさい しきをなして あきなひけれは ことの外はやり ける其ころは しよ人このゑを うるしゑと いひてうれし がりうれること   かぎりなし となりは大ぶん  あきないが     ある  まけては    ならぬが 此おもひ   つきは ばつと をちが きそう   な もの じや   が

現代語訳

【道意の店】回陽堂 こうして道意は頼朝を伴って伊豆の国に着いたので、池水成(いけすいなり)のそばに住んで、もともと慣れ親しんでいたもぐさの商売をしていた。その頃東国には切りもぐさという物がなかったので、珍しい物だということで非常に流行し、大小名様からおびただしく注文をいただき、商売は大変繁盛した。 かわらけ二つを合わせて、百丁入りを作った。これが切りもぐさの始まりだとかいう。 頼朝公はその頃は若い盛りで美しかったので、女性たちが立ち寄って「故郷京都にいた時のままの美しさだ」と噂したので、道意は思いついて、もぐさの版木を市松模様にしたのであった。 「ずいぶんと精を出されませ。外で手間をかけるよりも、内で治療すれば大分効果がよろしゅうございます。それが済むと小児を仕入れなければなりません。」 【孫兵衛の店】山内屋 その頃もぐさ屋ができた隣に、山内屋孫兵衛という者がいた。これも由緒ある者であったが、度重なる戦乱で落ちぶれ、伊豆の国へ引きこもっていたが、もともと才知ある者であったので、 昔と今の出来事を書き綴って草紙とし、また昔の名将や勇士の姿を紙に摺って彩色を施して商売したので、非常に流行した。その頃は人々この絵を漆絵と言って、喜んで買うことは限りなかった。 「隣は大分商売がある。負けてはならないが、この思いつきはばっと落ちが来そうなものだが。」

英語訳

【Doui's Shop】Kaiyodo Thus, Doui accompanied Yoritomo to Izu Province, and settled near Ikesuinari, engaging in the moxa business he had been familiar with from before. Since there was no cut moxa in the eastern provinces at that time, it was considered a rare commodity and became extremely popular. He received enormous orders from various daimyo, both great and small, and his business prospered greatly. He made packages of a hundred pieces by combining two earthenware cups. This is said to be the beginning of cut moxa. Lord Yoritomo was in the prime of his youth and very handsome at that time, so women would stop by and gossip that he looked "just as beautiful as when he was in the old capital." This gave Doui the idea to make the moxa printing blocks in a checkered pattern. "Please work diligently. Rather than taking the trouble to go outside, if you treat yourself at home, it will be much more effective. Once that's finished, we must stock up on children's [moxa]." 【Gonbei's Shop】Yamautiya Around that time, next to the moxa shop, there was a man called Yamautiya Gonbei. He was also a person of noble lineage, but had fallen on hard times due to repeated wars and had retreated to Izu Province. However, being originally a person of great wit, He wrote down events of past and present to make into booklets, and also printed images of famous generals and brave warriors of old on paper, adding colors to sell them. This became extremely popular. At that time, people called these pictures "lacquer paintings" and bought them with unlimited joy. "The neighbor has quite a business going. We mustn't be outdone, but this idea of mine might quickly lose its appeal."